S. Hashimoto, A. Fukuda, Y. Morimoto
{"title":"人类未成熟卵母细胞的收集","authors":"S. Hashimoto, A. Fukuda, Y. Morimoto","doi":"10.1274/JMOR.24.179","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"適切な卵巣刺激により複数の成熟卵子を得る方法は生殖 補助医療で児を得ることに大きく貢献してきた.しかし,多 嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者の場合,卵巣刺激を行った 場合に血中ホルモン値の測定,超音波による卵胞発育のモ ニタリングを十分に行っても,血中エストロゲン値が異常 に高まり,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の症状を呈し,妊 娠への悪影響だけでなく,生命が危険な状態にさらされる こともある.生殖補助医療を必要とするPCOS患者にこの ようなリスクを負わせないために,卵巣刺激を行わずに未 成熟卵子を回収し,体外で成熟培養を行う体外成熟が行わ れているが,ヒトの場合,回収された未成熟卵子の半分くら いしか成熟しないこと,成熟した卵子の児への発育能力が 体内成熟卵子に比べきわめて低いこと,卵巣刺激を行う方 法に比べ卵胞サイズが小さいことから,採卵が難しいこと がこの方法の普及の大きな妨げとなっている. そこで,我々は採卵時の卵巣を固定するために採卵二重針 (FS-IVF OSAKA-IVM北里サプライ)を開発した.採卵二重 針(図1)は外筒針(17ゲージ(G)卵巣把持用)と内筒針(20G 卵胞吸引用)から構成されており,吸引卵胞あたりの卵子回 収率は向上し(データ示さず),操作性が改善された. 一方,外筒針が存在することから,吸引針の内径が一般 的に使用されているもの(16または17G)より小さくなって しまった(表1).吸引針の内径が1/2の場合,数学的には吸 引圧を4倍にしないと卵子回収ラインを通過する卵丘細胞 卵子複合体(COCs)の速度を同程度に維持できない.また, ラインを通過する速度が速すぎるとCOCsに物理的ダメー ジを及ぼすと考えられた.そこで,吸引圧がCOCsの形態な らびに卵子の体外受精後の発育能に及ぼす影響を検討した. 屠場で採取されたウシ卵巣を用いて,18Gと21Gの吸引 針を用い,40から160 mmHgの吸引圧によりウシ未成熟卵 胞卵子を回収し,吸引針の内径ならびに吸引圧がCOCsの 形態に及ぼす影響を調べた.その結果,18G針では40 mmHg で吸引卵胞あたりの COCs 回収率がピークとなり, 80 mmHgを超えるとCOCs回収率が減少したのに対し,21G 針では120 mmHgでCOCsの回収率がピークとなった.ま た,実際にウシ生体からCOCsの回収を試みたところ,18G 針で40 mmHg,21G針で80ならびに120 mmHgを使用し た場合に吸引卵胞あたりのCOCs回収率が高かった.さら に,COCs,COCs より卵丘細胞がかなり剥離した卵子 (CO),そして細胞が完全に剥離した卵子(DO)の体外受精 後の発育能を検討したところ,胚盤胞への発育能はCOCs, CO,DOの順に低下した. 次に,十分なインフォームドコンセントを得た後に,採 卵二重針(20G吸引針)を用いて300 mmHgで実施していた ヒト未成熟卵子の回収を180 mmHg で行い,その成績を後 方視的に検討した.その結果,180 mmHgを用いた場合, COCsの回収卵子に占める割合は70±5%(平均値±標準誤 差,症例数16)と 300 mmHgを用いた場合(46± 8%,症","PeriodicalId":90599,"journal":{"name":"Journal of mammalian ova research","volume":"212 1","pages":"179-181"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2007-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Collection of Human Immature Oocytes\",\"authors\":\"S. Hashimoto, A. Fukuda, Y. Morimoto\",\"doi\":\"10.1274/JMOR.24.179\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"適切な卵巣刺激により複数の成熟卵子を得る方法は生殖 補助医療で児を得ることに大きく貢献してきた.しかし,多 嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者の場合,卵巣刺激を行った 場合に血中ホルモン値の測定,超音波による卵胞発育のモ ニタリングを十分に行っても,血中エストロゲン値が異常 に高まり,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の症状を呈し,妊 娠への悪影響だけでなく,生命が危険な状態にさらされる こともある.生殖補助医療を必要とするPCOS患者にこの ようなリスクを負わせないために,卵巣刺激を行わずに未 成熟卵子を回収し,体外で成熟培養を行う体外成熟が行わ れているが,ヒトの場合,回収された未成熟卵子の半分くら いしか成熟しないこと,成熟した卵子の児への発育能力が 体内成熟卵子に比べきわめて低いこと,卵巣刺激を行う方 法に比べ卵胞サイズが小さいことから,採卵が難しいこと がこの方法の普及の大きな妨げとなっている. そこで,我々は採卵時の卵巣を固定するために採卵二重針 (FS-IVF OSAKA-IVM北里サプライ)を開発した.採卵二重 針(図1)は外筒針(17ゲージ(G)卵巣把持用)と内筒針(20G 卵胞吸引用)から構成されており,吸引卵胞あたりの卵子回 収率は向上し(データ示さず),操作性が改善された. 一方,外筒針が存在することから,吸引針の内径が一般 的に使用されているもの(16または17G)より小さくなって しまった(表1).吸引針の内径が1/2の場合,数学的には吸 引圧を4倍にしないと卵子回収ラインを通過する卵丘細胞 卵子複合体(COCs)の速度を同程度に維持できない.また, ラインを通過する速度が速すぎるとCOCsに物理的ダメー ジを及ぼすと考えられた.そこで,吸引圧がCOCsの形態な らびに卵子の体外受精後の発育能に及ぼす影響を検討した. 屠場で採取されたウシ卵巣を用いて,18Gと21Gの吸引 針を用い,40から160 mmHgの吸引圧によりウシ未成熟卵 胞卵子を回収し,吸引針の内径ならびに吸引圧がCOCsの 形態に及ぼす影響を調べた.その結果,18G針では40 mmHg で吸引卵胞あたりの COCs 回収率がピークとなり, 80 mmHgを超えるとCOCs回収率が減少したのに対し,21G 針では120 mmHgでCOCsの回収率がピークとなった.ま た,実際にウシ生体からCOCsの回収を試みたところ,18G 針で40 mmHg,21G針で80ならびに120 mmHgを使用し た場合に吸引卵胞あたりのCOCs回収率が高かった.さら に,COCs,COCs より卵丘細胞がかなり剥離した卵子 (CO),そして細胞が完全に剥離した卵子(DO)の体外受精 後の発育能を検討したところ,胚盤胞への発育能はCOCs, CO,DOの順に低下した. 次に,十分なインフォームドコンセントを得た後に,採 卵二重針(20G吸引針)を用いて300 mmHgで実施していた ヒト未成熟卵子の回収を180 mmHg で行い,その成績を後 方視的に検討した.その結果,180 mmHgを用いた場合, COCsの回収卵子に占める割合は70±5%(平均値±標準誤 差,症例数16)と 300 mmHgを用いた場合(46± 8%,症\",\"PeriodicalId\":90599,\"journal\":{\"name\":\"Journal of mammalian ova research\",\"volume\":\"212 1\",\"pages\":\"179-181\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2007-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Journal of mammalian ova research\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.1274/JMOR.24.179\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Journal of mammalian ova research","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.1274/JMOR.24.179","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
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Collection of Human Immature Oocytes
適切な卵巣刺激により複数の成熟卵子を得る方法は生殖 補助医療で児を得ることに大きく貢献してきた.しかし,多 嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者の場合,卵巣刺激を行った 場合に血中ホルモン値の測定,超音波による卵胞発育のモ ニタリングを十分に行っても,血中エストロゲン値が異常 に高まり,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の症状を呈し,妊 娠への悪影響だけでなく,生命が危険な状態にさらされる こともある.生殖補助医療を必要とするPCOS患者にこの ようなリスクを負わせないために,卵巣刺激を行わずに未 成熟卵子を回収し,体外で成熟培養を行う体外成熟が行わ れているが,ヒトの場合,回収された未成熟卵子の半分くら いしか成熟しないこと,成熟した卵子の児への発育能力が 体内成熟卵子に比べきわめて低いこと,卵巣刺激を行う方 法に比べ卵胞サイズが小さいことから,採卵が難しいこと がこの方法の普及の大きな妨げとなっている. そこで,我々は採卵時の卵巣を固定するために採卵二重針 (FS-IVF OSAKA-IVM北里サプライ)を開発した.採卵二重 針(図1)は外筒針(17ゲージ(G)卵巣把持用)と内筒針(20G 卵胞吸引用)から構成されており,吸引卵胞あたりの卵子回 収率は向上し(データ示さず),操作性が改善された. 一方,外筒針が存在することから,吸引針の内径が一般 的に使用されているもの(16または17G)より小さくなって しまった(表1).吸引針の内径が1/2の場合,数学的には吸 引圧を4倍にしないと卵子回収ラインを通過する卵丘細胞 卵子複合体(COCs)の速度を同程度に維持できない.また, ラインを通過する速度が速すぎるとCOCsに物理的ダメー ジを及ぼすと考えられた.そこで,吸引圧がCOCsの形態な らびに卵子の体外受精後の発育能に及ぼす影響を検討した. 屠場で採取されたウシ卵巣を用いて,18Gと21Gの吸引 針を用い,40から160 mmHgの吸引圧によりウシ未成熟卵 胞卵子を回収し,吸引針の内径ならびに吸引圧がCOCsの 形態に及ぼす影響を調べた.その結果,18G針では40 mmHg で吸引卵胞あたりの COCs 回収率がピークとなり, 80 mmHgを超えるとCOCs回収率が減少したのに対し,21G 針では120 mmHgでCOCsの回収率がピークとなった.ま た,実際にウシ生体からCOCsの回収を試みたところ,18G 針で40 mmHg,21G針で80ならびに120 mmHgを使用し た場合に吸引卵胞あたりのCOCs回収率が高かった.さら に,COCs,COCs より卵丘細胞がかなり剥離した卵子 (CO),そして細胞が完全に剥離した卵子(DO)の体外受精 後の発育能を検討したところ,胚盤胞への発育能はCOCs, CO,DOの順に低下した. 次に,十分なインフォームドコンセントを得た後に,採 卵二重針(20G吸引針)を用いて300 mmHgで実施していた ヒト未成熟卵子の回収を180 mmHg で行い,その成績を後 方視的に検討した.その結果,180 mmHgを用いた場合, COCsの回収卵子に占める割合は70±5%(平均値±標準誤 差,症例数16)と 300 mmHgを用いた場合(46± 8%,症