{"title":"硫化过程中二烯橡胶顺反异构化的研究","authors":"Koya Yoshimoto, Masayoshi Ito","doi":"10.2324/GOMU.85.87","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"天然ゴムやブタジエンゴムなど,分子中に多数の二重結 合を有するジエンゴムは,加硫反応によって高分子鎖間に 架橋構造を形成し,ゴム弾性体としての特性を高めること によって材料として使用される.この加硫反応は, Goodyearによる世紀の大発見に始まり,加硫促進剤,加 硫促進助剤の開発など,飛躍的な進歩を遂げてきた.しか し,加硫反応は複雑であり, その機構はまだ完全には理解 されていない. 加硫反応の解明を困難とする一因として,副反応の存在 を挙げることができる.ジエンゴムでは,加硫反応時 cis1,4構造の一部が trans-1,4構造に変化する,シス-トランス 異性化反応が認められる.そのため,副反応であるシストランス異性化反応を抑制することは,加硫反応を解明し ていく上で重要な課題であると考えられる. シス-トランス異性化反応はまた,ジエンゴムの物性に も影響を与える.ジエンゴム分子中のシス構造とトランス 構造の含有量は,ジエンゴムの性質を左右する重要な要素 である.Cis-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造 を有する天然ゴムは,エントロピー弾性体であるのに対し, trans-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造のガタパ ーチャは,エネルギー弾性体としての性質を有する熱可塑 性樹脂であり,シス構造とトランス構造の含有量により, 弾性体としての性質が大きく変化する.そのため,シストランス異性化反応の進行により,trans-1,4構造量が増加 することは,ジエンゴムの最大の特徴であるエントロピー 弾性という性質を消失させる可能性が高い.したがって, 加硫反応に並行して進行するシス-トランス異性化反応を 抑制することは,ジエンゴムの特質を保ちながら架橋構造 を形成させることを可能とし,ジエンゴムの更なる高性能 化につながると考えられる. Golubは,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応が,ラ ジカルによる触媒反応によって引き起こされることを報告 している.Bishopは,加硫反応過程におけるシス-トラ ンス異性化反応が,硫黄によって引き起こされる反応であ ること,この反応が加硫温度や加硫時間に影響されること を報告している.しかし,実際の加硫反応には,加硫促 進剤や加硫促進助剤が併用されるため,これらの影響も考 慮に入れて議論する必要があるが,これについては十分な 検討がなされていない. 本研究は,加硫反応に併用される加硫促進剤及び加硫促 進助剤が,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応に及ぼ す影響について検討することを目的とした.","PeriodicalId":405949,"journal":{"name":"Journal of the Society of Rubber Industry,Japan","volume":"49 12","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2012-03-15","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Study on Cis-trans Isomerization in Diene Rubbers during Vulcanization\",\"authors\":\"Koya Yoshimoto, Masayoshi Ito\",\"doi\":\"10.2324/GOMU.85.87\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"天然ゴムやブタジエンゴムなど,分子中に多数の二重結 合を有するジエンゴムは,加硫反応によって高分子鎖間に 架橋構造を形成し,ゴム弾性体としての特性を高めること によって材料として使用される.この加硫反応は, Goodyearによる世紀の大発見に始まり,加硫促進剤,加 硫促進助剤の開発など,飛躍的な進歩を遂げてきた.しか し,加硫反応は複雑であり, その機構はまだ完全には理解 されていない. 加硫反応の解明を困難とする一因として,副反応の存在 を挙げることができる.ジエンゴムでは,加硫反応時 cis1,4構造の一部が trans-1,4構造に変化する,シス-トランス 異性化反応が認められる.そのため,副反応であるシストランス異性化反応を抑制することは,加硫反応を解明し ていく上で重要な課題であると考えられる. シス-トランス異性化反応はまた,ジエンゴムの物性に も影響を与える.ジエンゴム分子中のシス構造とトランス 構造の含有量は,ジエンゴムの性質を左右する重要な要素 である.Cis-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造 を有する天然ゴムは,エントロピー弾性体であるのに対し, trans-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造のガタパ ーチャは,エネルギー弾性体としての性質を有する熱可塑 性樹脂であり,シス構造とトランス構造の含有量により, 弾性体としての性質が大きく変化する.そのため,シストランス異性化反応の進行により,trans-1,4構造量が増加 することは,ジエンゴムの最大の特徴であるエントロピー 弾性という性質を消失させる可能性が高い.したがって, 加硫反応に並行して進行するシス-トランス異性化反応を 抑制することは,ジエンゴムの特質を保ちながら架橋構造 を形成させることを可能とし,ジエンゴムの更なる高性能 化につながると考えられる. Golubは,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応が,ラ ジカルによる触媒反応によって引き起こされることを報告 している.Bishopは,加硫反応過程におけるシス-トラ ンス異性化反応が,硫黄によって引き起こされる反応であ ること,この反応が加硫温度や加硫時間に影響されること を報告している.しかし,実際の加硫反応には,加硫促 進剤や加硫促進助剤が併用されるため,これらの影響も考 慮に入れて議論する必要があるが,これについては十分な 検討がなされていない. 本研究は,加硫反応に併用される加硫促進剤及び加硫促 進助剤が,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応に及ぼ す影響について検討することを目的とした.\",\"PeriodicalId\":405949,\"journal\":{\"name\":\"Journal of the Society of Rubber Industry,Japan\",\"volume\":\"49 12\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2012-03-15\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Journal of the Society of Rubber Industry,Japan\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.2324/GOMU.85.87\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Journal of the Society of Rubber Industry,Japan","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.2324/GOMU.85.87","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 0
Study on Cis-trans Isomerization in Diene Rubbers during Vulcanization
天然ゴムやブタジエンゴムなど,分子中に多数の二重結 合を有するジエンゴムは,加硫反応によって高分子鎖間に 架橋構造を形成し,ゴム弾性体としての特性を高めること によって材料として使用される.この加硫反応は, Goodyearによる世紀の大発見に始まり,加硫促進剤,加 硫促進助剤の開発など,飛躍的な進歩を遂げてきた.しか し,加硫反応は複雑であり, その機構はまだ完全には理解 されていない. 加硫反応の解明を困難とする一因として,副反応の存在 を挙げることができる.ジエンゴムでは,加硫反応時 cis1,4構造の一部が trans-1,4構造に変化する,シス-トランス 異性化反応が認められる.そのため,副反応であるシストランス異性化反応を抑制することは,加硫反応を解明し ていく上で重要な課題であると考えられる. シス-トランス異性化反応はまた,ジエンゴムの物性に も影響を与える.ジエンゴム分子中のシス構造とトランス 構造の含有量は,ジエンゴムの性質を左右する重要な要素 である.Cis-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造 を有する天然ゴムは,エントロピー弾性体であるのに対し, trans-1,4-イソプレン単位が繰り返し連なった構造のガタパ ーチャは,エネルギー弾性体としての性質を有する熱可塑 性樹脂であり,シス構造とトランス構造の含有量により, 弾性体としての性質が大きく変化する.そのため,シストランス異性化反応の進行により,trans-1,4構造量が増加 することは,ジエンゴムの最大の特徴であるエントロピー 弾性という性質を消失させる可能性が高い.したがって, 加硫反応に並行して進行するシス-トランス異性化反応を 抑制することは,ジエンゴムの特質を保ちながら架橋構造 を形成させることを可能とし,ジエンゴムの更なる高性能 化につながると考えられる. Golubは,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応が,ラ ジカルによる触媒反応によって引き起こされることを報告 している.Bishopは,加硫反応過程におけるシス-トラ ンス異性化反応が,硫黄によって引き起こされる反応であ ること,この反応が加硫温度や加硫時間に影響されること を報告している.しかし,実際の加硫反応には,加硫促 進剤や加硫促進助剤が併用されるため,これらの影響も考 慮に入れて議論する必要があるが,これについては十分な 検討がなされていない. 本研究は,加硫反応に併用される加硫促進剤及び加硫促 進助剤が,ジエンゴムのシス-トランス異性化反応に及ぼ す影響について検討することを目的とした.