M. Yoshizawa‐Fujita, Hideki Hanabusa, Y. Takeoka, M. Rikukawa
{"title":"纤维素在质子离子液体中的酯化反应","authors":"M. Yoshizawa‐Fujita, Hideki Hanabusa, Y. Takeoka, M. Rikukawa","doi":"10.1295/koron.2019-0017","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"セルロースは天然に豊富に存在する非可食性の高分子 であり,カーボンニュートラルな材料である.機能材料 としても注目されており,セルロースの誘導体化に関す る研究が活発に行われている.たとえば,セルロースの エステル誘導体として硝酸セルロースのような無機酸エ ステルや酢酸セルロースのような有機酸エステルが報告 されている1),2).セルロースのヒドロキシ基にさまざま な官能基を導入することができ,エステル誘導体以外に も多数のセルロース誘導体が報告されている3). 一方,難溶性高分子であるセルロースを溶解するイオ ン液体 (IL)が 2002年に報告され4),多くの研究者の興味 を集めている5)~7).ILは 100°C以下に融点を有する有機 塩であり,難揮発性,難燃性などの特徴を有する8),9). ILは真空下で加熱しても飛散しないため,繰返し使用 できる環境調和型溶媒として期待され,IL中において 種々の反応が行われている8),9).たとえば,セルロース の高分子反応が IL中で行われている.Schlufterらは,1butyl-3-methylimidazolium chloride ([C4mim]Cl) 中でのセ ルロースのアセチル化およびカルボニル化を報告し た10).Hinnerらは,セルロースのビニルエステル化が 1-ethyl-3-methylimidazolium acetate ([C2mim][OAc])中で進 行すること,さらに [C2mim][OAc]がリサイクル可能で あることを報告した11). 最 近, 筆 者 ら は 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (DBU)と酢酸 (HOAc)の中和反応により作製したプロト ン性イオン液体 (PIL)である [DBUH][OAc]が,セルロー スのエステル化反応において,溶媒兼触媒として機能す ることを報告した12).PILとは,Brønsted酸からBrønsted 塩基へのプロトン移動反応によって得られる ILであ る.酸と塩基の pKa値の差 (¦pKa)が大きいときにイオ ン性が高まるため,強酸と強塩基を組合せることが多 い.Angellらは,¦pKa値が 10以上のとき,PILは非プ ロトン性 ILと同様の挙動を示すことを見いだした13). 一方,¦pKa値が 10以下のとき,PILは蒸留により精製 できる.中和反応は可逆的であるため,真空下では逆反 応が起こり,蒸留が可能となる.[DBUH][OAc]の¦pKa 値は 8.52であり,セルロースのエステル化反応後,蒸留 により [DBUH][OAc]を精製することで繰返し使用でき る12).これは非プロトン性 ILにはない特徴である.さ らに,セルロースのエステル化反応において,PILのア ニオンがエステル交換反応によりセルロースに修飾さ れることを見いだした12).本報では,DBUと酢酸,プ ロピオン酸 (HOPr),または酪酸 (HOBu)を組合せた三 種の PIL ([DBUH][OAc], [DBUH][OPr], [DBUH][OBu]) を合成し (Figure 1),それら PIL中でセルロースのエス 公益社団法人高分子学会","PeriodicalId":17878,"journal":{"name":"Kobunshi Ronbunshu","volume":"3 1","pages":""},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2019-07-25","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Esterification of Cellulose in Protic Ionic Liquids\",\"authors\":\"M. Yoshizawa‐Fujita, Hideki Hanabusa, Y. Takeoka, M. Rikukawa\",\"doi\":\"10.1295/koron.2019-0017\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"セルロースは天然に豊富に存在する非可食性の高分子 であり,カーボンニュートラルな材料である.機能材料 としても注目されており,セルロースの誘導体化に関す る研究が活発に行われている.たとえば,セルロースの エステル誘導体として硝酸セルロースのような無機酸エ ステルや酢酸セルロースのような有機酸エステルが報告 されている1),2).セルロースのヒドロキシ基にさまざま な官能基を導入することができ,エステル誘導体以外に も多数のセルロース誘導体が報告されている3). 一方,難溶性高分子であるセルロースを溶解するイオ ン液体 (IL)が 2002年に報告され4),多くの研究者の興味 を集めている5)~7).ILは 100°C以下に融点を有する有機 塩であり,難揮発性,難燃性などの特徴を有する8),9). ILは真空下で加熱しても飛散しないため,繰返し使用 できる環境調和型溶媒として期待され,IL中において 種々の反応が行われている8),9).たとえば,セルロース の高分子反応が IL中で行われている.Schlufterらは,1butyl-3-methylimidazolium chloride ([C4mim]Cl) 中でのセ ルロースのアセチル化およびカルボニル化を報告し た10).Hinnerらは,セルロースのビニルエステル化が 1-ethyl-3-methylimidazolium acetate ([C2mim][OAc])中で進 行すること,さらに [C2mim][OAc]がリサイクル可能で あることを報告した11). 最 近, 筆 者 ら は 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (DBU)と酢酸 (HOAc)の中和反応により作製したプロト ン性イオン液体 (PIL)である [DBUH][OAc]が,セルロー スのエステル化反応において,溶媒兼触媒として機能す ることを報告した12).PILとは,Brønsted酸からBrønsted 塩基へのプロトン移動反応によって得られる ILであ る.酸と塩基の pKa値の差 (¦pKa)が大きいときにイオ ン性が高まるため,強酸と強塩基を組合せることが多 い.Angellらは,¦pKa値が 10以上のとき,PILは非プ ロトン性 ILと同様の挙動を示すことを見いだした13). 一方,¦pKa値が 10以下のとき,PILは蒸留により精製 できる.中和反応は可逆的であるため,真空下では逆反 応が起こり,蒸留が可能となる.[DBUH][OAc]の¦pKa 値は 8.52であり,セルロースのエステル化反応後,蒸留 により [DBUH][OAc]を精製することで繰返し使用でき る12).これは非プロトン性 ILにはない特徴である.さ らに,セルロースのエステル化反応において,PILのア ニオンがエステル交換反応によりセルロースに修飾さ れることを見いだした12).本報では,DBUと酢酸,プ ロピオン酸 (HOPr),または酪酸 (HOBu)を組合せた三 種の PIL ([DBUH][OAc], [DBUH][OPr], [DBUH][OBu]) を合成し (Figure 1),それら PIL中でセルロースのエス 公益社団法人高分子学会\",\"PeriodicalId\":17878,\"journal\":{\"name\":\"Kobunshi Ronbunshu\",\"volume\":\"3 1\",\"pages\":\"\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2019-07-25\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Kobunshi Ronbunshu\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.1295/koron.2019-0017\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"Q3\",\"JCRName\":\"Materials Science\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Kobunshi Ronbunshu","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.1295/koron.2019-0017","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"Q3","JCRName":"Materials Science","Score":null,"Total":0}
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Esterification of Cellulose in Protic Ionic Liquids
セルロースは天然に豊富に存在する非可食性の高分子 であり,カーボンニュートラルな材料である.機能材料 としても注目されており,セルロースの誘導体化に関す る研究が活発に行われている.たとえば,セルロースの エステル誘導体として硝酸セルロースのような無機酸エ ステルや酢酸セルロースのような有機酸エステルが報告 されている1),2).セルロースのヒドロキシ基にさまざま な官能基を導入することができ,エステル誘導体以外に も多数のセルロース誘導体が報告されている3). 一方,難溶性高分子であるセルロースを溶解するイオ ン液体 (IL)が 2002年に報告され4),多くの研究者の興味 を集めている5)~7).ILは 100°C以下に融点を有する有機 塩であり,難揮発性,難燃性などの特徴を有する8),9). ILは真空下で加熱しても飛散しないため,繰返し使用 できる環境調和型溶媒として期待され,IL中において 種々の反応が行われている8),9).たとえば,セルロース の高分子反応が IL中で行われている.Schlufterらは,1butyl-3-methylimidazolium chloride ([C4mim]Cl) 中でのセ ルロースのアセチル化およびカルボニル化を報告し た10).Hinnerらは,セルロースのビニルエステル化が 1-ethyl-3-methylimidazolium acetate ([C2mim][OAc])中で進 行すること,さらに [C2mim][OAc]がリサイクル可能で あることを報告した11). 最 近, 筆 者 ら は 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (DBU)と酢酸 (HOAc)の中和反応により作製したプロト ン性イオン液体 (PIL)である [DBUH][OAc]が,セルロー スのエステル化反応において,溶媒兼触媒として機能す ることを報告した12).PILとは,Brønsted酸からBrønsted 塩基へのプロトン移動反応によって得られる ILであ る.酸と塩基の pKa値の差 (¦pKa)が大きいときにイオ ン性が高まるため,強酸と強塩基を組合せることが多 い.Angellらは,¦pKa値が 10以上のとき,PILは非プ ロトン性 ILと同様の挙動を示すことを見いだした13). 一方,¦pKa値が 10以下のとき,PILは蒸留により精製 できる.中和反応は可逆的であるため,真空下では逆反 応が起こり,蒸留が可能となる.[DBUH][OAc]の¦pKa 値は 8.52であり,セルロースのエステル化反応後,蒸留 により [DBUH][OAc]を精製することで繰返し使用でき る12).これは非プロトン性 ILにはない特徴である.さ らに,セルロースのエステル化反応において,PILのア ニオンがエステル交換反応によりセルロースに修飾さ れることを見いだした12).本報では,DBUと酢酸,プ ロピオン酸 (HOPr),または酪酸 (HOBu)を組合せた三 種の PIL ([DBUH][OAc], [DBUH][OPr], [DBUH][OBu]) を合成し (Figure 1),それら PIL中でセルロースのエス 公益社団法人高分子学会