{"title":"分子电子结构和电子激发动力学的x射线和电子散射研究","authors":"Noboru Watanabe","doi":"10.3175/MOLSCI.7.A0059","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"【序】分子の性質の多くは,その内に存在する電子の運動によって強く支配されている。HOMO(最 高被占有軌道)や LUMO(最低空軌道)といった個々の分子軌道の形が分子の反応性を決定づけ ることは,フロンティア軌道理論が端的に示すところであるし,また,クーロン斥力に起因した電子間 の運動相関(電子相関)が様々な物性の発現にしばしば顕著な影響を与えることも知られている。分 子の性質を論ずる上での電子運動の重要性から,その詳細な理解は分子科学における中心的課題 となってきた。特に分光学的な手法に基づく電子状態研究は活発であり,数多の研究成果が報告さ れてきている。しかしながら,分子のエネルギー準位に関しては分光研究により膨大な知見が蓄積さ れてきたものの,個々の分子軌道の形状であるとか,電子相関の起源である電子同士の斥け合いと いったことまで実験的に観測しようと思うと,励起エネルギーやイオン化エネルギーなどの“エネルギ ー”だけではなく何らかの実験パラメータの追加が必要となる。状態のエネルギー値だけでは,電子 の分布やその運動相関までは分らないからである。ここで,分子との衝突によって X 線や高速電子 が散乱される過程を考えてみる。すると,入射X線(電子線)から標的分子へのエネルギー移行に加 えて散乱前後の運動量変化も生じるため,“エネルギー”だけでなく“運動量”までもが現象を規定す るパラメータとなっていることに気づく。つまり,X 線や電子線の散乱実験によれば散乱断面積の運 動量依存性という観点からも標的電子構造を論じることが可能になる。本発表では,運動量依存性 を利用した分子の電子状態研究について,我々のこれまでの研究成果[1]の中から主に以下の三つ のトピックスを取り上げ,紹介したい。 【X線散乱を用いた電子相関の研究】 如何に電子相関の効果を十分に取り入れるかという問題は, 現代の量子化学において最も重要な課題の一つとなっている。この目的のため,CI 法や多体摂動 論,クラスター展開法といった多様な理論的手法が提案されてきた。しかし,そうした理論計算の評 価は容易ではない。実験値の殆どは電子相関に鋭敏とはい えない一電子演算子の期待値であることから,実験による検 証が難しいためである。電子相関を敏感に反映する物理量 として,距離 r12離れた電子ペアの存在確率を表す電子二体 分布関数 P(r12) があげられる。実際の系では,電子間反発 により近距離での電子ペアの割合が減少するのであるから, r12の小さな領域でP(r12)がHartree Fock近似による計算値に 比べ小さくなるという形で電子相関の効果が表れるだろう。X 線の弾性散乱と非弾性散乱の和である全散乱強度σee(K)は, P(r12)とフーリエ変換により一義的関係づけられることが知ら れており,電子相関を実験的にみるという目的に適した物理 3A06","PeriodicalId":19105,"journal":{"name":"Molecular Science","volume":"7 1","pages":""},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2013-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"1","resultStr":"{\"title\":\"X-ray and Electron Scattering Studies on Electronic Structures and Electronic Excitation Dynamics of Molecules\",\"authors\":\"Noboru Watanabe\",\"doi\":\"10.3175/MOLSCI.7.A0059\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"【序】分子の性質の多くは,その内に存在する電子の運動によって強く支配されている。HOMO(最 高被占有軌道)や LUMO(最低空軌道)といった個々の分子軌道の形が分子の反応性を決定づけ ることは,フロンティア軌道理論が端的に示すところであるし,また,クーロン斥力に起因した電子間 の運動相関(電子相関)が様々な物性の発現にしばしば顕著な影響を与えることも知られている。分 子の性質を論ずる上での電子運動の重要性から,その詳細な理解は分子科学における中心的課題 となってきた。特に分光学的な手法に基づく電子状態研究は活発であり,数多の研究成果が報告さ れてきている。しかしながら,分子のエネルギー準位に関しては分光研究により膨大な知見が蓄積さ れてきたものの,個々の分子軌道の形状であるとか,電子相関の起源である電子同士の斥け合いと いったことまで実験的に観測しようと思うと,励起エネルギーやイオン化エネルギーなどの“エネルギ ー”だけではなく何らかの実験パラメータの追加が必要となる。状態のエネルギー値だけでは,電子 の分布やその運動相関までは分らないからである。ここで,分子との衝突によって X 線や高速電子 が散乱される過程を考えてみる。すると,入射X線(電子線)から標的分子へのエネルギー移行に加 えて散乱前後の運動量変化も生じるため,“エネルギー”だけでなく“運動量”までもが現象を規定す るパラメータとなっていることに気づく。つまり,X 線や電子線の散乱実験によれば散乱断面積の運 動量依存性という観点からも標的電子構造を論じることが可能になる。本発表では,運動量依存性 を利用した分子の電子状態研究について,我々のこれまでの研究成果[1]の中から主に以下の三つ のトピックスを取り上げ,紹介したい。 【X線散乱を用いた電子相関の研究】 如何に電子相関の効果を十分に取り入れるかという問題は, 現代の量子化学において最も重要な課題の一つとなっている。この目的のため,CI 法や多体摂動 論,クラスター展開法といった多様な理論的手法が提案されてきた。しかし,そうした理論計算の評 価は容易ではない。実験値の殆どは電子相関に鋭敏とはい えない一電子演算子の期待値であることから,実験による検 証が難しいためである。電子相関を敏感に反映する物理量 として,距離 r12離れた電子ペアの存在確率を表す電子二体 分布関数 P(r12) があげられる。実際の系では,電子間反発 により近距離での電子ペアの割合が減少するのであるから, r12の小さな領域でP(r12)がHartree Fock近似による計算値に 比べ小さくなるという形で電子相関の効果が表れるだろう。X 線の弾性散乱と非弾性散乱の和である全散乱強度σee(K)は, P(r12)とフーリエ変換により一義的関係づけられることが知ら れており,電子相関を実験的にみるという目的に適した物理 3A06\",\"PeriodicalId\":19105,\"journal\":{\"name\":\"Molecular Science\",\"volume\":\"7 1\",\"pages\":\"\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2013-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"1\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Molecular Science\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.3175/MOLSCI.7.A0059\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Molecular Science","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.3175/MOLSCI.7.A0059","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
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X-ray and Electron Scattering Studies on Electronic Structures and Electronic Excitation Dynamics of Molecules
【序】分子の性質の多くは,その内に存在する電子の運動によって強く支配されている。HOMO(最 高被占有軌道)や LUMO(最低空軌道)といった個々の分子軌道の形が分子の反応性を決定づけ ることは,フロンティア軌道理論が端的に示すところであるし,また,クーロン斥力に起因した電子間 の運動相関(電子相関)が様々な物性の発現にしばしば顕著な影響を与えることも知られている。分 子の性質を論ずる上での電子運動の重要性から,その詳細な理解は分子科学における中心的課題 となってきた。特に分光学的な手法に基づく電子状態研究は活発であり,数多の研究成果が報告さ れてきている。しかしながら,分子のエネルギー準位に関しては分光研究により膨大な知見が蓄積さ れてきたものの,個々の分子軌道の形状であるとか,電子相関の起源である電子同士の斥け合いと いったことまで実験的に観測しようと思うと,励起エネルギーやイオン化エネルギーなどの“エネルギ ー”だけではなく何らかの実験パラメータの追加が必要となる。状態のエネルギー値だけでは,電子 の分布やその運動相関までは分らないからである。ここで,分子との衝突によって X 線や高速電子 が散乱される過程を考えてみる。すると,入射X線(電子線)から標的分子へのエネルギー移行に加 えて散乱前後の運動量変化も生じるため,“エネルギー”だけでなく“運動量”までもが現象を規定す るパラメータとなっていることに気づく。つまり,X 線や電子線の散乱実験によれば散乱断面積の運 動量依存性という観点からも標的電子構造を論じることが可能になる。本発表では,運動量依存性 を利用した分子の電子状態研究について,我々のこれまでの研究成果[1]の中から主に以下の三つ のトピックスを取り上げ,紹介したい。 【X線散乱を用いた電子相関の研究】 如何に電子相関の効果を十分に取り入れるかという問題は, 現代の量子化学において最も重要な課題の一つとなっている。この目的のため,CI 法や多体摂動 論,クラスター展開法といった多様な理論的手法が提案されてきた。しかし,そうした理論計算の評 価は容易ではない。実験値の殆どは電子相関に鋭敏とはい えない一電子演算子の期待値であることから,実験による検 証が難しいためである。電子相関を敏感に反映する物理量 として,距離 r12離れた電子ペアの存在確率を表す電子二体 分布関数 P(r12) があげられる。実際の系では,電子間反発 により近距離での電子ペアの割合が減少するのであるから, r12の小さな領域でP(r12)がHartree Fock近似による計算値に 比べ小さくなるという形で電子相関の効果が表れるだろう。X 線の弾性散乱と非弾性散乱の和である全散乱強度σee(K)は, P(r12)とフーリエ変換により一義的関係づけられることが知ら れており,電子相関を実験的にみるという目的に適した物理 3A06