T. Matsuo, K. Kario, Shunji Suzuki
求助PDF
{"title":"Catastrophic stress and cardiac events after Hanshin-Awaji earthqueke:—阪神·淡路大地震压力与心肌梗塞的发病—","authors":"T. Matsuo, K. Kario, Shunji Suzuki","doi":"10.5551/jat1973.27.9-10_263","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"平成7年1月17日 未明に発生した阪神 ・淡路大震災は, 直接的な人的物的被害を始め, 被災地域の住民に強いス ト レスを与えた. 特に, 震源地に近い淡路島津名郡では, 北 淡町を中心に多大の人的物的被害が発生した. 地域住民が 被ったス トレスは, アメリカ精神医学会発行の 「精神障害 の診断 ・統計マニュアル(DSM-III-R)」 によれば, 今回の 地震の心理的社会的ストレスの強さは, 6段 階評価で破局 的ス トレスに該当する. 今回の震災で, さらに配偶者の死, 重症の外傷を含む極度のス トレスを経験した被災者も少な くない. 淡路島全域 をカバーする本院の救急センターで は, 震災直後の外傷を中心とした外科的救急患者が一段落 すると, 被災地からの内科的疾患の搬送が増加 した. 急性心筋梗塞の増加は著明で, 過去3年 間の同時期の患 者発生数 と比較 して約3倍 の増加であった(Fig.1)1). 心筋 梗塞患者の リスクファクターを震災前の患者 と震災後に発 生した患者で比較すると, 男女比(前9:4 vs. 後7:8), 年 齢(66±4 vs. 73±3), コレステロール(202±19 vs. 186± 12mg/dl),中 性脂肪(84±16 vs. 127±15), HDLコ レステ ロール(42±4 vs. 39±4)と 有意差はなかったが, いずれ も高齢者からの発症であった. しかし, post-mental trauma stress scoreを面接調査すると, stress scoreは加齢 とは関係 なく, 性差があ り, 女性が男性に比較 して有意の高得点を 示 した ことから, 女性がス トレスに対 して感受性が強い結 果が得 られた2). 地震によるス トレスが, 引金 となって心筋 梗塞が増加することは, 1994年 のカリフォルニアのノース リッジ地震でも経験 されている3). 強い情動ス トレスが引 金 となって, 高齢者女性に心筋梗塞がおこることはまれで なく, 日常診療においても認められている4). 津名郡医師会の死因調査によれば, 地震後に突然死を含 めた高齢者の心臓死が増加している. 特に, 心臓死は人的 物的被害の大きかった町に顕著で, 北淡町では31%の 家屋 が倒壊し, 34%の 住民が避難所での生活を余儀な くされて いる. その結果, 心臓死は約2倍 に増加 し, その特徴 とし て夜間に発症している. これは, 震災のス トレスに加えて, 避難所での生活や余震による恐怖のため, 十分な睡眠が得 られていない結果であると結論されている5).","PeriodicalId":22769,"journal":{"name":"The journal of Japan Atherosclerosis Society","volume":null,"pages":null},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2000-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Catastrophic stress and cardiac events after Hanshin-Awaji earthqueke: ―阪神・淡路大震災ストレスと心筋梗塞の発症―\",\"authors\":\"T. Matsuo, K. Kario, Shunji Suzuki\",\"doi\":\"10.5551/jat1973.27.9-10_263\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"平成7年1月17日 未明に発生した阪神 ・淡路大震災は, 直接的な人的物的被害を始め, 被災地域の住民に強いス ト レスを与えた. 特に, 震源地に近い淡路島津名郡では, 北 淡町を中心に多大の人的物的被害が発生した. 地域住民が 被ったス トレスは, アメリカ精神医学会発行の 「精神障害 の診断 ・統計マニュアル(DSM-III-R)」 によれば, 今回の 地震の心理的社会的ストレスの強さは, 6段 階評価で破局 的ス トレスに該当する. 今回の震災で, さらに配偶者の死, 重症の外傷を含む極度のス トレスを経験した被災者も少な くない. 淡路島全域 をカバーする本院の救急センターで は, 震災直後の外傷を中心とした外科的救急患者が一段落 すると, 被災地からの内科的疾患の搬送が増加 した. 急性心筋梗塞の増加は著明で, 過去3年 間の同時期の患 者発生数 と比較 して約3倍 の増加であった(Fig.1)1). 心筋 梗塞患者の リスクファクターを震災前の患者 と震災後に発 生した患者で比較すると, 男女比(前9:4 vs. 後7:8), 年 齢(66±4 vs. 73±3), コレステロール(202±19 vs. 186± 12mg/dl),中 性脂肪(84±16 vs. 127±15), HDLコ レステ ロール(42±4 vs. 39±4)と 有意差はなかったが, いずれ も高齢者からの発症であった. しかし, post-mental trauma stress scoreを面接調査すると, stress scoreは加齢 とは関係 なく, 性差があ り, 女性が男性に比較 して有意の高得点を 示 した ことから, 女性がス トレスに対 して感受性が強い結 果が得 られた2). 地震によるス トレスが, 引金 となって心筋 梗塞が増加することは, 1994年 のカリフォルニアのノース リッジ地震でも経験 されている3). 強い情動ス トレスが引 金 となって, 高齢者女性に心筋梗塞がおこることはまれで なく, 日常診療においても認められている4). 津名郡医師会の死因調査によれば, 地震後に突然死を含 めた高齢者の心臓死が増加している. 特に, 心臓死は人的 物的被害の大きかった町に顕著で, 北淡町では31%の 家屋 が倒壊し, 34%の 住民が避難所での生活を余儀な くされて いる. その結果, 心臓死は約2倍 に増加 し, その特徴 とし て夜間に発症している. これは, 震災のス トレスに加えて, 避難所での生活や余震による恐怖のため, 十分な睡眠が得 られていない結果であると結論されている5).\",\"PeriodicalId\":22769,\"journal\":{\"name\":\"The journal of Japan Atherosclerosis Society\",\"volume\":null,\"pages\":null},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2000-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"The journal of Japan Atherosclerosis Society\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.5551/jat1973.27.9-10_263\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"The journal of Japan Atherosclerosis Society","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.5551/jat1973.27.9-10_263","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 0
引用
批量引用
Catastrophic stress and cardiac events after Hanshin-Awaji earthqueke: ―阪神・淡路大震災ストレスと心筋梗塞の発症―
平成7年1月17日 未明に発生した阪神 ・淡路大震災は, 直接的な人的物的被害を始め, 被災地域の住民に強いス ト レスを与えた. 特に, 震源地に近い淡路島津名郡では, 北 淡町を中心に多大の人的物的被害が発生した. 地域住民が 被ったス トレスは, アメリカ精神医学会発行の 「精神障害 の診断 ・統計マニュアル(DSM-III-R)」 によれば, 今回の 地震の心理的社会的ストレスの強さは, 6段 階評価で破局 的ス トレスに該当する. 今回の震災で, さらに配偶者の死, 重症の外傷を含む極度のス トレスを経験した被災者も少な くない. 淡路島全域 をカバーする本院の救急センターで は, 震災直後の外傷を中心とした外科的救急患者が一段落 すると, 被災地からの内科的疾患の搬送が増加 した. 急性心筋梗塞の増加は著明で, 過去3年 間の同時期の患 者発生数 と比較 して約3倍 の増加であった(Fig.1)1). 心筋 梗塞患者の リスクファクターを震災前の患者 と震災後に発 生した患者で比較すると, 男女比(前9:4 vs. 後7:8), 年 齢(66±4 vs. 73±3), コレステロール(202±19 vs. 186± 12mg/dl),中 性脂肪(84±16 vs. 127±15), HDLコ レステ ロール(42±4 vs. 39±4)と 有意差はなかったが, いずれ も高齢者からの発症であった. しかし, post-mental trauma stress scoreを面接調査すると, stress scoreは加齢 とは関係 なく, 性差があ り, 女性が男性に比較 して有意の高得点を 示 した ことから, 女性がス トレスに対 して感受性が強い結 果が得 られた2). 地震によるス トレスが, 引金 となって心筋 梗塞が増加することは, 1994年 のカリフォルニアのノース リッジ地震でも経験 されている3). 強い情動ス トレスが引 金 となって, 高齢者女性に心筋梗塞がおこることはまれで なく, 日常診療においても認められている4). 津名郡医師会の死因調査によれば, 地震後に突然死を含 めた高齢者の心臓死が増加している. 特に, 心臓死は人的 物的被害の大きかった町に顕著で, 北淡町では31%の 家屋 が倒壊し, 34%の 住民が避難所での生活を余儀な くされて いる. その結果, 心臓死は約2倍 に増加 し, その特徴 とし て夜間に発症している. これは, 震災のス トレスに加えて, 避難所での生活や余震による恐怖のため, 十分な睡眠が得 られていない結果であると結論されている5).