Tadashi Nakamura, T. Funahashi, Y. Matsuzawa
{"title":"内脏脂肪综合征和胰岛素抵抗","authors":"Tadashi Nakamura, T. Funahashi, Y. Matsuzawa","doi":"10.5551/JAT1973.25.11-12_403","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"近年の食生活やライフスタイルの変化により, わが国に おいても冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加 しており, 大きな問題 となっている. この過栄養状態を基 盤 とし動脈硬化性疾患を高率に発症する病態は, 耐糖能異 常や高脂血症, 高血圧などの多数の危険因子が同時に集簇 して存在することが特徴であり, Table 1に示すような種々 の概念が提唱 されてい る.そ の代表 として1988年 に Reavenが 提唱した 「シンドロームX (Syndrome X)」 は主 として非肥満者を対象 としたものであり, 肥満が動脈硬化 に寄与する病態としては,翌 年Kaplanの 提唱 した「死の四 重奏(The deadly quaaret)」があげられる1,2). これら概念の 根底には, 肥満の有無にかかわらず,い ずれもインスリン 抵抗性の存在を推察 してお り, 同様の概念 としてインスリ ン抵抗性をこれら概念の中心的な因子 として重要視する考 え方から, 1991年 にDeFronzoら が 「インス リン抵抗性症 候群(Syndrome of insulin resistance)」なる呼称を用いるに 至った3). このことにより, 糖尿病研究者だけでなく, 循環 器の分野で もインス リン抵抗性 ということばが注目され, 関心が高まるようになった. しかし, これら病態に認めら れるインスリン抵抗性の発症機序の本態は何か, また, こ れら概念ではインスリン抵抗性により生じる高インスリン 血症が重要視されているが,は た してそれは正 しいのか, さらに, 集簇する多数の危険因子をインス リン抵抗性のみ で説明しうるか否かに関して, いまだ明確な考え方は示さ れていない. , 肥満における脂肪分布 と合併症の研究において, 上半身肥満 といった皮下脂肪の分布ではな く, 内臓の脂肪 蓄積に着目した著者らの検討により, 腹腔内(主 に腸間膜) に脂肪が蓄積する 「内臓脂肪型肥満(Visceral fat obesity)」 が密接にインス リン抵抗性 と関連して種々の危険因子を発 症 し動脈硬化につながることが明らかとなっている45). し たがって, 内臓脂肪型肥満は前述した種々の概念 と共通す る病態である. さらに, 最近になって, この内臓脂肪の蓄 積が肥満者だけでな く, 正常体重者においても耐糖能異常 をはじめ種々の危険因子, ひいては動脈硬化性疾患の発症 と強 く関係することを明らかにし, 普遍的に動脈硬化の成 立に関与する病態として 「内臓脂肪症候群(Visceral fat syndrome)」 なる概念 を提唱 している6).本症候群 はRisk factors clusteringの成立機構 の上流に内臓脂肪蓄積を置き, インスリン抵抗性を含めた種々の因子が存在 し, 最終的に 動脈硬化 を発症するメカニズムを想定 している. 本稿で は,マ ルチプル リスクファクター症候群におけるインス リ ン抵抗性の位置づけ, および内臓脂肪蓄積の意義につき述 べる.","PeriodicalId":22769,"journal":{"name":"The journal of Japan Atherosclerosis Society","volume":null,"pages":null},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"1998-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Visceral fat syndrome and insulin resistance\",\"authors\":\"Tadashi Nakamura, T. Funahashi, Y. Matsuzawa\",\"doi\":\"10.5551/JAT1973.25.11-12_403\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"近年の食生活やライフスタイルの変化により, わが国に おいても冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加 しており, 大きな問題 となっている. この過栄養状態を基 盤 とし動脈硬化性疾患を高率に発症する病態は, 耐糖能異 常や高脂血症, 高血圧などの多数の危険因子が同時に集簇 して存在することが特徴であり, Table 1に示すような種々 の概念が提唱 されてい る.そ の代表 として1988年 に Reavenが 提唱した 「シンドロームX (Syndrome X)」 は主 として非肥満者を対象 としたものであり, 肥満が動脈硬化 に寄与する病態としては,翌 年Kaplanの 提唱 した「死の四 重奏(The deadly quaaret)」があげられる1,2). これら概念の 根底には, 肥満の有無にかかわらず,い ずれもインスリン 抵抗性の存在を推察 してお り, 同様の概念 としてインスリ ン抵抗性をこれら概念の中心的な因子 として重要視する考 え方から, 1991年 にDeFronzoら が 「インス リン抵抗性症 候群(Syndrome of insulin resistance)」なる呼称を用いるに 至った3). このことにより, 糖尿病研究者だけでなく, 循環 器の分野で もインス リン抵抗性 ということばが注目され, 関心が高まるようになった. しかし, これら病態に認めら れるインスリン抵抗性の発症機序の本態は何か, また, こ れら概念ではインスリン抵抗性により生じる高インスリン 血症が重要視されているが,は た してそれは正 しいのか, さらに, 集簇する多数の危険因子をインス リン抵抗性のみ で説明しうるか否かに関して, いまだ明確な考え方は示さ れていない. , 肥満における脂肪分布 と合併症の研究において, 上半身肥満 といった皮下脂肪の分布ではな く, 内臓の脂肪 蓄積に着目した著者らの検討により, 腹腔内(主 に腸間膜) に脂肪が蓄積する 「内臓脂肪型肥満(Visceral fat obesity)」 が密接にインス リン抵抗性 と関連して種々の危険因子を発 症 し動脈硬化につながることが明らかとなっている45). し たがって, 内臓脂肪型肥満は前述した種々の概念 と共通す る病態である. さらに, 最近になって, この内臓脂肪の蓄 積が肥満者だけでな く, 正常体重者においても耐糖能異常 をはじめ種々の危険因子, ひいては動脈硬化性疾患の発症 と強 く関係することを明らかにし, 普遍的に動脈硬化の成 立に関与する病態として 「内臓脂肪症候群(Visceral fat syndrome)」 なる概念 を提唱 している6).本症候群 はRisk factors clusteringの成立機構 の上流に内臓脂肪蓄積を置き, インスリン抵抗性を含めた種々の因子が存在 し, 最終的に 動脈硬化 を発症するメカニズムを想定 している. 本稿で は,マ ルチプル リスクファクター症候群におけるインス リ ン抵抗性の位置づけ, および内臓脂肪蓄積の意義につき述 べる.\",\"PeriodicalId\":22769,\"journal\":{\"name\":\"The journal of Japan Atherosclerosis Society\",\"volume\":null,\"pages\":null},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"1998-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"The journal of Japan Atherosclerosis Society\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.5551/JAT1973.25.11-12_403\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"The journal of Japan Atherosclerosis Society","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.5551/JAT1973.25.11-12_403","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 0
Visceral fat syndrome and insulin resistance
近年の食生活やライフスタイルの変化により, わが国に おいても冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加 しており, 大きな問題 となっている. この過栄養状態を基 盤 とし動脈硬化性疾患を高率に発症する病態は, 耐糖能異 常や高脂血症, 高血圧などの多数の危険因子が同時に集簇 して存在することが特徴であり, Table 1に示すような種々 の概念が提唱 されてい る.そ の代表 として1988年 に Reavenが 提唱した 「シンドロームX (Syndrome X)」 は主 として非肥満者を対象 としたものであり, 肥満が動脈硬化 に寄与する病態としては,翌 年Kaplanの 提唱 した「死の四 重奏(The deadly quaaret)」があげられる1,2). これら概念の 根底には, 肥満の有無にかかわらず,い ずれもインスリン 抵抗性の存在を推察 してお り, 同様の概念 としてインスリ ン抵抗性をこれら概念の中心的な因子 として重要視する考 え方から, 1991年 にDeFronzoら が 「インス リン抵抗性症 候群(Syndrome of insulin resistance)」なる呼称を用いるに 至った3). このことにより, 糖尿病研究者だけでなく, 循環 器の分野で もインス リン抵抗性 ということばが注目され, 関心が高まるようになった. しかし, これら病態に認めら れるインスリン抵抗性の発症機序の本態は何か, また, こ れら概念ではインスリン抵抗性により生じる高インスリン 血症が重要視されているが,は た してそれは正 しいのか, さらに, 集簇する多数の危険因子をインス リン抵抗性のみ で説明しうるか否かに関して, いまだ明確な考え方は示さ れていない. , 肥満における脂肪分布 と合併症の研究において, 上半身肥満 といった皮下脂肪の分布ではな く, 内臓の脂肪 蓄積に着目した著者らの検討により, 腹腔内(主 に腸間膜) に脂肪が蓄積する 「内臓脂肪型肥満(Visceral fat obesity)」 が密接にインス リン抵抗性 と関連して種々の危険因子を発 症 し動脈硬化につながることが明らかとなっている45). し たがって, 内臓脂肪型肥満は前述した種々の概念 と共通す る病態である. さらに, 最近になって, この内臓脂肪の蓄 積が肥満者だけでな く, 正常体重者においても耐糖能異常 をはじめ種々の危険因子, ひいては動脈硬化性疾患の発症 と強 く関係することを明らかにし, 普遍的に動脈硬化の成 立に関与する病態として 「内臓脂肪症候群(Visceral fat syndrome)」 なる概念 を提唱 している6).本症候群 はRisk factors clusteringの成立機構 の上流に内臓脂肪蓄積を置き, インスリン抵抗性を含めた種々の因子が存在 し, 最終的に 動脈硬化 を発症するメカニズムを想定 している. 本稿で は,マ ルチプル リスクファクター症候群におけるインス リ ン抵抗性の位置づけ, および内臓脂肪蓄積の意義につき述 べる.