T. Kaneko
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Peptidoglycan and periodontal diseases
ヒトにおいて自然免疫(Innate immunity)は細菌感 染に対する最初の防御反応であり,細菌に共通して存 在するが宿主生体内には存在しない構造や分子,すな わち Pathogen-associated molecular patterns (PAMPs) を特異的に認識するパターン分子認識受容体 (PRRs)が細菌感染を検知することにより誘導される。 PRRsは遺伝子にコードされているタンパク質で,好 中球やマクロファージ,樹状細胞などの食細胞に強く 発現し,自然免疫応答においてはこれらの細胞が中心 的に働いている。しかし,それら以外の細胞や体液中 にも発現しており,基本的には我々を構成するすべて の細胞,体液中で自然免疫応答を惹起することができ る。このことは歯周組織をはじめとする生体のどの部 位に病原細菌が侵入しても素早くその侵入を検知,防 御反応を惹起することで病原体のクリアランスに寄与 する点で優れている。さらに細菌構成物によるマクロ ファージや樹状細胞の PRRs刺激による活性化は,T 細胞への抗原提示を介した獲得免疫を活性化し,より 強固な防御反応を誘導すること,そして組織損傷後の 修復において重要な役割を果たしていることも知られ ている。 ペプチドグリカン(PGN)はグラム陽性細菌および グラム陰性細菌の細胞壁を構成し,グラム陽性菌では 細胞膜外に,歯周病原細菌などのグラム陰性菌では細 胞外膜と内膜の間に存在している。PGNは様々な PRRsを刺激し,発熱作用,炎症誘発能,アジュバント 作用,補体の活性化能,マクロファージを活性化しサ イトカインや iNOSの発現作用,オートファジー誘導 能,上皮細胞による抗菌ペプチドの誘導能などの生物 学的活性を有することから1),歯周病原細菌感染によ る歯周病の病態形成との関連性が考えられている。本 総説においては,歯周病原細菌の PGNとそれらの生 物学的活性,受容体と細胞内シグナリング,歯周病と の関連性について解説する。