M. Miyakawa, H. Tsuji, M. Nakata
{"title":"高迁移率溶液加工金属氧化物薄膜晶体管的研制","authors":"M. Miyakawa, H. Tsuji, M. Nakata","doi":"10.3169/itej.76.135","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"TV,スマートフォン,タブレットなどディスプレイを主 体とする電子デバイスは日々の生活に広く普及し,発展し てきた.ディスプレイの発展に伴い,技術進化は目覚まし く,近年では,これまで使われてきた硬いガラスに代わり, 薄くて,軽く,曲げることが可能なプラスチックフィルム 上に形成したフレキシブルディスプレイが注目され,折り 畳み型のスマートフォンの実用化されるなど新たな応用に 向けた研究開発が進められている1)2).特に,薄型,曲面, 折り畳みという特長を活かした大画面フレキシブルディス プレイは,ポスターと同じ感覚で丸められる壁貼りディス プレイなどへ応用できる極めて魅力的な技術であり,新た な視聴スタイルやこれまでのデザインに変革をもたらす技 術として期待されている3). ディスプレイを表示させるためには,画素ごとに有機EL (Electroluminescence)などの発光素子の明るさを制御する 薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)が必要で あり,フレキシブルディスプレイでは,薄いプラスチック フィルム上に微細なTFTを多数形成することが求められ る.現在の液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ 向けに使われているTFTの半導体材料は,非晶質シリコン (a-Si: smorphous silicon),多結晶シリコン(poly-Si: polycrystalline silicon),酸化物半導体に分類される.大型 テレビなどの液晶ディスプレイに用いられているのは大部 分がa-Si TFTである.これは,a-Siが大面積に均一に形成 可能であること,比較的低コストで作製できることに起因 する.しかし,a-Si TFTは移動度が1 cm2/Vs以下と小さ く,有機ELディスプレイに求められる特性を満足するこ とが難しい.Poly-Si TFTは移動度が100 cm2/Vs程度と高 いことから,小型・高精細のスマートフォン向けおよびタ ブレット機器などに応用されている.しかし,poly-Siは, 形成装置の大型基板への対応やコストが課題とされてい る.また有機半導体の研究も盛んであるが,ディスプレイ 応用には高移動度化や有機材料の安定性など課題がある. これらに対して,酸化物半導体は,スパッタリング法で大 面積に製膜することが可能であるとともに,有機EL素子 を駆動するのに十分な移動度を示す材料である.代表的な 材料であるIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)は10 cm2/Vs程度の移動 度が得られ,現在の大型有機ELディスプレイの駆動にも 用いられ,性能や信頼性という点で優れた材料である4)~6). 高移動度や大面積への形成,きわめて小さいリーク電流特 性,さらにはプラスチック基板への適用が可能である酸化 物半導体は,将来の大画面フレキシブルディスプレイ駆動 用TFTの半導体材料として最も有望と言える. しかしながら,現在のTFT作製においては,いずれの TFTにおいても大がかりな真空装置が不可欠であり,真空 中での薄膜形成が必要である.しかし,ディスプレイサイズ の大型化に伴い,TFTの形成に必要な真空装置は非常に大 きなものになり,装置コストや製造時の消費エネルギーが課 題となっている.そのため,真空装置を用いずに常圧大気下 で液体の材料を塗って形成できる塗布型TFT(図1)が,低 コスト,省エネルギー,高生産性,大面積化を実現するため に必要な次世代のTFT技術として期待されている7)8). われわれの研究グループでは高性能化が可能であり,実 用化も期待できる酸化物半導体の塗布製膜技術の研究を進 めている.これまでに,低温プロセスで不純物の低減が可 あらまし NHK放送技術研究所は,大画面の超高精細映像を家庭でも手軽に楽しめることを目指して,薄くて軽 く柔らかいフレキシブルディスプレイに向けた駆動素子として,塗布溶液を用いて低コスト,省エネルギー,高生産 性,大面積化を実現するために必要な塗布型酸化物薄膜トランジスタの研究を進めている.今回,フィルム適用可能 な低温プロセスにおいても高品質化が可能な水系酸化物半導体の開発とともに,光照射によってその薄膜を直接パ ターン形成するダイレクトパターニング技術の開発により,高移動度塗布型酸化物薄膜トランジスタを実現した.ま た,本技術をフィルム基板上に形成することで,大画面フレキシブルディスプレイへの適用可能性も併せて確認した.","PeriodicalId":39325,"journal":{"name":"Kyokai Joho Imeji Zasshi/Journal of the Institute of Image Information and Television Engineers","volume":"1 1","pages":""},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2022-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Development of High-mobility Solution-processed Metal Oxide Thin-film Transistor\",\"authors\":\"M. Miyakawa, H. Tsuji, M. Nakata\",\"doi\":\"10.3169/itej.76.135\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"TV,スマートフォン,タブレットなどディスプレイを主 体とする電子デバイスは日々の生活に広く普及し,発展し てきた.ディスプレイの発展に伴い,技術進化は目覚まし く,近年では,これまで使われてきた硬いガラスに代わり, 薄くて,軽く,曲げることが可能なプラスチックフィルム 上に形成したフレキシブルディスプレイが注目され,折り 畳み型のスマートフォンの実用化されるなど新たな応用に 向けた研究開発が進められている1)2).特に,薄型,曲面, 折り畳みという特長を活かした大画面フレキシブルディス プレイは,ポスターと同じ感覚で丸められる壁貼りディス プレイなどへ応用できる極めて魅力的な技術であり,新た な視聴スタイルやこれまでのデザインに変革をもたらす技 術として期待されている3). ディスプレイを表示させるためには,画素ごとに有機EL (Electroluminescence)などの発光素子の明るさを制御する 薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)が必要で あり,フレキシブルディスプレイでは,薄いプラスチック フィルム上に微細なTFTを多数形成することが求められ る.現在の液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ 向けに使われているTFTの半導体材料は,非晶質シリコン (a-Si: smorphous silicon),多結晶シリコン(poly-Si: polycrystalline silicon),酸化物半導体に分類される.大型 テレビなどの液晶ディスプレイに用いられているのは大部 分がa-Si TFTである.これは,a-Siが大面積に均一に形成 可能であること,比較的低コストで作製できることに起因 する.しかし,a-Si TFTは移動度が1 cm2/Vs以下と小さ く,有機ELディスプレイに求められる特性を満足するこ とが難しい.Poly-Si TFTは移動度が100 cm2/Vs程度と高 いことから,小型・高精細のスマートフォン向けおよびタ ブレット機器などに応用されている.しかし,poly-Siは, 形成装置の大型基板への対応やコストが課題とされてい る.また有機半導体の研究も盛んであるが,ディスプレイ 応用には高移動度化や有機材料の安定性など課題がある. これらに対して,酸化物半導体は,スパッタリング法で大 面積に製膜することが可能であるとともに,有機EL素子 を駆動するのに十分な移動度を示す材料である.代表的な 材料であるIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)は10 cm2/Vs程度の移動 度が得られ,現在の大型有機ELディスプレイの駆動にも 用いられ,性能や信頼性という点で優れた材料である4)~6). 高移動度や大面積への形成,きわめて小さいリーク電流特 性,さらにはプラスチック基板への適用が可能である酸化 物半導体は,将来の大画面フレキシブルディスプレイ駆動 用TFTの半導体材料として最も有望と言える. しかしながら,現在のTFT作製においては,いずれの TFTにおいても大がかりな真空装置が不可欠であり,真空 中での薄膜形成が必要である.しかし,ディスプレイサイズ の大型化に伴い,TFTの形成に必要な真空装置は非常に大 きなものになり,装置コストや製造時の消費エネルギーが課 題となっている.そのため,真空装置を用いずに常圧大気下 で液体の材料を塗って形成できる塗布型TFT(図1)が,低 コスト,省エネルギー,高生産性,大面積化を実現するため に必要な次世代のTFT技術として期待されている7)8). われわれの研究グループでは高性能化が可能であり,実 用化も期待できる酸化物半導体の塗布製膜技術の研究を進 めている.これまでに,低温プロセスで不純物の低減が可 あらまし NHK放送技術研究所は,大画面の超高精細映像を家庭でも手軽に楽しめることを目指して,薄くて軽 く柔らかいフレキシブルディスプレイに向けた駆動素子として,塗布溶液を用いて低コスト,省エネルギー,高生産 性,大面積化を実現するために必要な塗布型酸化物薄膜トランジスタの研究を進めている.今回,フィルム適用可能 な低温プロセスにおいても高品質化が可能な水系酸化物半導体の開発とともに,光照射によってその薄膜を直接パ ターン形成するダイレクトパターニング技術の開発により,高移動度塗布型酸化物薄膜トランジスタを実現した.ま た,本技術をフィルム基板上に形成することで,大画面フレキシブルディスプレイへの適用可能性も併せて確認した.\",\"PeriodicalId\":39325,\"journal\":{\"name\":\"Kyokai Joho Imeji Zasshi/Journal of the Institute of Image Information and Television Engineers\",\"volume\":\"1 1\",\"pages\":\"\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2022-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Kyokai Joho Imeji Zasshi/Journal of the Institute of Image Information and Television Engineers\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.3169/itej.76.135\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"Q4\",\"JCRName\":\"Engineering\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Kyokai Joho Imeji Zasshi/Journal of the Institute of Image Information and Television Engineers","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.3169/itej.76.135","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"Q4","JCRName":"Engineering","Score":null,"Total":0}
引用次数: 0
Development of High-mobility Solution-processed Metal Oxide Thin-film Transistor
TV,スマートフォン,タブレットなどディスプレイを主 体とする電子デバイスは日々の生活に広く普及し,発展し てきた.ディスプレイの発展に伴い,技術進化は目覚まし く,近年では,これまで使われてきた硬いガラスに代わり, 薄くて,軽く,曲げることが可能なプラスチックフィルム 上に形成したフレキシブルディスプレイが注目され,折り 畳み型のスマートフォンの実用化されるなど新たな応用に 向けた研究開発が進められている1)2).特に,薄型,曲面, 折り畳みという特長を活かした大画面フレキシブルディス プレイは,ポスターと同じ感覚で丸められる壁貼りディス プレイなどへ応用できる極めて魅力的な技術であり,新た な視聴スタイルやこれまでのデザインに変革をもたらす技 術として期待されている3). ディスプレイを表示させるためには,画素ごとに有機EL (Electroluminescence)などの発光素子の明るさを制御する 薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)が必要で あり,フレキシブルディスプレイでは,薄いプラスチック フィルム上に微細なTFTを多数形成することが求められ る.現在の液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ 向けに使われているTFTの半導体材料は,非晶質シリコン (a-Si: smorphous silicon),多結晶シリコン(poly-Si: polycrystalline silicon),酸化物半導体に分類される.大型 テレビなどの液晶ディスプレイに用いられているのは大部 分がa-Si TFTである.これは,a-Siが大面積に均一に形成 可能であること,比較的低コストで作製できることに起因 する.しかし,a-Si TFTは移動度が1 cm2/Vs以下と小さ く,有機ELディスプレイに求められる特性を満足するこ とが難しい.Poly-Si TFTは移動度が100 cm2/Vs程度と高 いことから,小型・高精細のスマートフォン向けおよびタ ブレット機器などに応用されている.しかし,poly-Siは, 形成装置の大型基板への対応やコストが課題とされてい る.また有機半導体の研究も盛んであるが,ディスプレイ 応用には高移動度化や有機材料の安定性など課題がある. これらに対して,酸化物半導体は,スパッタリング法で大 面積に製膜することが可能であるとともに,有機EL素子 を駆動するのに十分な移動度を示す材料である.代表的な 材料であるIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)は10 cm2/Vs程度の移動 度が得られ,現在の大型有機ELディスプレイの駆動にも 用いられ,性能や信頼性という点で優れた材料である4)~6). 高移動度や大面積への形成,きわめて小さいリーク電流特 性,さらにはプラスチック基板への適用が可能である酸化 物半導体は,将来の大画面フレキシブルディスプレイ駆動 用TFTの半導体材料として最も有望と言える. しかしながら,現在のTFT作製においては,いずれの TFTにおいても大がかりな真空装置が不可欠であり,真空 中での薄膜形成が必要である.しかし,ディスプレイサイズ の大型化に伴い,TFTの形成に必要な真空装置は非常に大 きなものになり,装置コストや製造時の消費エネルギーが課 題となっている.そのため,真空装置を用いずに常圧大気下 で液体の材料を塗って形成できる塗布型TFT(図1)が,低 コスト,省エネルギー,高生産性,大面積化を実現するため に必要な次世代のTFT技術として期待されている7)8). われわれの研究グループでは高性能化が可能であり,実 用化も期待できる酸化物半導体の塗布製膜技術の研究を進 めている.これまでに,低温プロセスで不純物の低減が可 あらまし NHK放送技術研究所は,大画面の超高精細映像を家庭でも手軽に楽しめることを目指して,薄くて軽 く柔らかいフレキシブルディスプレイに向けた駆動素子として,塗布溶液を用いて低コスト,省エネルギー,高生産 性,大面積化を実現するために必要な塗布型酸化物薄膜トランジスタの研究を進めている.今回,フィルム適用可能 な低温プロセスにおいても高品質化が可能な水系酸化物半導体の開発とともに,光照射によってその薄膜を直接パ ターン形成するダイレクトパターニング技術の開発により,高移動度塗布型酸化物薄膜トランジスタを実現した.ま た,本技術をフィルム基板上に形成することで,大画面フレキシブルディスプレイへの適用可能性も併せて確認した.