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Novel Fish-derived Peptides Which Induce Vasorelaxation of Porcine Coronary Arteries
血管拡張薬は,虚血性心臓病,高血圧症,心不全 など多くの心血管病に対して,急性期/慢性期を問 わず,頻用されている治療薬である.これらの心血 管病では,急性発症や急性増悪する場合も少なくな いため,日常から摂取可能な食品や食品成分の中か ら,血管弛緩を引き起こす成分が発見できれば,こ れらの心血管病の予防の一助となる可能性が期待さ れる.さらに,同定された食品成分が水溶性であれ ば,注射薬の開発にも繋がると期待される. そこで,食品や食品成分から幅広くスクリーニン グを行い,血管弛緩作用を有する食品成分として, 水溶性の魚類由来ペプチド群(FDPFs)を見出し た.FDPFsは,食用可能なタンパク質分解酵素を 用いて魚類タンパク質から生産されたペプチド群で あり,内膜を除去したブタ冠状動脈平滑筋条片を濃 度依存性に強力かつ持続的に弛緩させた.さらに, タンデム型質量分析計を用いて,FDPFsの中から, 連続性のあるアミノ酸配列を有する4つのペプチド (PG,GPG,VGPG,VGPGG)を同定した.これ らのペプチドは生理活性を有するものとして過去に 全く報告のない新規ペプチドであった. FDPFsから同定された新規ペプチドのアミノ酸 配列に従って合成したペプチドは,実際にブタ冠状 動脈平滑筋条片を濃度依存性に弛緩させた.さらに, ペプチド長に応じて血管弛緩作用も増強したため, 最長のVGPGGを認識する新規の受容体の関与が示 唆された.また,この弛緩は,血管平滑筋の細胞質 カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)の低下を伴わな かったため,平滑筋収縮のCa2+感受性の低下によ るものと考えられた. FDPFsは強力かつ持続的な血管弛緩作用を有し ていたことから,血管病を予防する有望な食品成分 となり得ると期待される.また,同定ペプチドも同 様な作用を有しており,また水溶性であることから, 注射液などの医薬品への応用が可能となれば,心血 管病の急性期治療へ貢献できる可能性を持っている と期待される.