Effectiveness of Japanese larch windbreaks during spring cultivation season: evaluation in local history chronicles, Tokachi plain

十勝平野における晩秋から晩春にかけての主たる風 向は北西または西であり,日高山脈から吹き下ろす強 風が吹き付ける。4月下旬になると雪が融け,土壌の 乾燥が始まり,フェーン現象で乾燥した強い西風が吹 きつけ,軽しょうな火山灰の畑地の土を種子や種薯も ろとも空高く舞上げる。この季節風は6月中旬までみ られ,十勝春風,十勝風,日高おろし,日高嶺おろし, 馬糞風などと呼ばれてきた。この風害から畑を守るた めにカラマツを主体とした1~4列植栽の耕地防風林 が発達したものである(音更町史編さん委員会, 2002;鹿追町史編纂委員会,1994;清水町史編さん委 員会,2005)。 十勝地方におけるカラマツの開葉時期は5月上旬で あり(北海道立林業試験場刊行物編集委員会,2002), 短枝葉の展開は開葉から3週間程度を要する(廣川・ 鈴木,2006)。したがって,カラマツは畑地が十勝春 風の被害を受けやすい期間のうち,開葉していないか 短枝葉が展開中である期間が長い。カラマツの耕地防 風林の十勝春風に対する防風効果については,開葉前 や開葉直後のため充分ではないという意見がある(鳥 田ら,2003;Tsuji et al ., 2005;辻ら,2007)。一方で, 北海道立林業試験場(2005)は,冬季に耕地防風林の 調査を行い,落葉期のカラマツの耕地防風林の周囲に もトドマツと同程度の雪丘がみられることから,落葉 期のカラマツにも常緑樹であるトドマツと同程度の防 風効果があるとしている。このような相反する見解が あるため,現在は,春耕期にも防風効果の高い樹種と してカラマツを勧めることはできない。 ところで,十勝地方の農家や農業関係者は,十勝春 風による風害,耕地防風林の植樹,そしてその防風効 果を仕事や日常生活を通して実体験しており,春耕期 におけるカラマツの耕地防風林の防風効果に対する認 識が郷土資料の中に証言として遺されていると思われ る。そこで本調査では,十勝平野の郷土資料における カラマツの耕地防風林に対する防風効果の認識につい ての記述を収集することとした。