为在日本珊瑚礁水域设定海洋保护区(MPA):考察菲律宾维萨亚地区海洋保护区后考虑

信 大森, 洋基 谷口, 一彦 小池, M. L. Lawrence, 三郎 保坂
{"title":"为在日本珊瑚礁水域设定海洋保护区(MPA):考察菲律宾维萨亚地区海洋保护区后考虑","authors":"信 大森, 洋基 谷口, 一彦 小池, M. L. Lawrence, 三郎 保坂","doi":"10.3755/JCRS.12.81","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"海洋保護区(Marine Protected Area; MPA)には世界中でさまざまな定義があって,まだ統一的な概念には至っていないが,2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」のなかでは各国が2012年までにMPAを設定することが決議され,さらに翌年の第5回世界公園会議では「各国が2012年までに海洋の各生息地の最低20~30%の厳格な保護区を含む,効果的に管理された代表的な保護区ネットワークを構築する」ことなどが勧告された。これらは「2012年目標」とよばれて,各国政府がそれを遵守することが求められている。わが国のMPAについても公的または広く使われている定義はない。私たちはMPAの設定目的を「潮間帯と潮下帯の生物群集全体あるいは生物多様性を長く効果的な手段で保護することによって漁業資源の持続的な利用を図るため」とし,MPAは「漁業資源の持続的な利用を可能にするために,生育環境の人為的改変を認めず,法律やそのほかの効果的な手段によって生物の採取捕獲が禁止あるいは制限されている区域」すなわちNo-take Zoneのようなものであるべきだと考えている。そのようなMPAを直ちにわが国の沿岸海域全体に導入することは困難だろうが,漁業対象種がその資源を自己維持できる面積を推定し,それをもとに仮の保護区を設定して,一定期間後,その効果を検証するような研究が望まれる。さんご礁に的を絞れば,漁業と生物多様性が両立するMPAの設定は可能かもしれない。区域内では漁業活動はもちろん,遊漁もダイビングも研究のための生物採集も制限の対象にする。法的に制度化されたMPAの設定ではアジアでもっとも古い歴史を持つフィリピンで,さんご礁生態系がよく保護されているMPAはどのように管理運営され,地元の人びとはどのようにMPAに関わっているのだろうか。私達は2010年3月フィリピンのビサヤ地方を訪ねて,さんご礁に小さなMPA(=禁漁区)をたくさん作ることによって漁業資源と生物多様性の両方を護るという戦略を進めてきたフィリピン型MPAの創始者A.C. Alcala博士から意見を聞き,アポ島をはじめとする周辺の島々のMPAを視察して,地元民から聞き取り調査を行った。漁業資源とすべての生物群集を護るためには,MPAの面積は対象魚種が区域内で自己維持できる広さであることが望ましい。またMPAは行政主導のトップダウン方式ではなく,地元の人びとの全面的な合意と参加がなければ長続きしないと思われる。区域内を禁漁としても,MPA内で増えた漁業資源が区域外に出て周辺漁場の漁獲量の上昇に寄与するという波及効果(spillover)が実証されれば,漁民は制約にしたがう理由を理解するだろう。また,ダイバーなどの観光客から入場料を徴収すれば,費用をMPAの管理運営や漁民への生活補償に充てることができるだろう。成功の鍵は地域住民に対する継続的な教育啓発活動,住民に信頼されるリーダーの存在と,それに会計および活動内容の透明性である。沖縄の慶良間海域は漁業従事者が少なく,漁業規模が小さい上,ダイビングなどの観光業を支えるさんご礁の価値に対する住民の意識が高い。さんご礁の生物群集は定着性が強いものが多く,住民の生計手段に観光収入が期待できるので,そこでは望ましいMPAのモデルを試行できるように思われる。慶良間海域のさんご礁を念頭に置き,MPAの設定に向けて方法や運用について考察した。","PeriodicalId":432348,"journal":{"name":"Journal of The Japanese Coral Reef Society","volume":"219 1","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2010-12-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"3","resultStr":"{\"title\":\"日本のさんご礁水域に海洋保護区(MPA)を設定するために:フィリピン,ビサヤ地域の海洋保護区を視察して考える\",\"authors\":\"信 大森, 洋基 谷口, 一彦 小池, M. L. Lawrence, 三郎 保坂\",\"doi\":\"10.3755/JCRS.12.81\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"海洋保護区(Marine Protected Area; MPA)には世界中でさまざまな定義があって,まだ統一的な概念には至っていないが,2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」のなかでは各国が2012年までにMPAを設定することが決議され,さらに翌年の第5回世界公園会議では「各国が2012年までに海洋の各生息地の最低20~30%の厳格な保護区を含む,効果的に管理された代表的な保護区ネットワークを構築する」ことなどが勧告された。これらは「2012年目標」とよばれて,各国政府がそれを遵守することが求められている。わが国のMPAについても公的または広く使われている定義はない。私たちはMPAの設定目的を「潮間帯と潮下帯の生物群集全体あるいは生物多様性を長く効果的な手段で保護することによって漁業資源の持続的な利用を図るため」とし,MPAは「漁業資源の持続的な利用を可能にするために,生育環境の人為的改変を認めず,法律やそのほかの効果的な手段によって生物の採取捕獲が禁止あるいは制限されている区域」すなわちNo-take Zoneのようなものであるべきだと考えている。そのようなMPAを直ちにわが国の沿岸海域全体に導入することは困難だろうが,漁業対象種がその資源を自己維持できる面積を推定し,それをもとに仮の保護区を設定して,一定期間後,その効果を検証するような研究が望まれる。さんご礁に的を絞れば,漁業と生物多様性が両立するMPAの設定は可能かもしれない。区域内では漁業活動はもちろん,遊漁もダイビングも研究のための生物採集も制限の対象にする。法的に制度化されたMPAの設定ではアジアでもっとも古い歴史を持つフィリピンで,さんご礁生態系がよく保護されているMPAはどのように管理運営され,地元の人びとはどのようにMPAに関わっているのだろうか。私達は2010年3月フィリピンのビサヤ地方を訪ねて,さんご礁に小さなMPA(=禁漁区)をたくさん作ることによって漁業資源と生物多様性の両方を護るという戦略を進めてきたフィリピン型MPAの創始者A.C. Alcala博士から意見を聞き,アポ島をはじめとする周辺の島々のMPAを視察して,地元民から聞き取り調査を行った。漁業資源とすべての生物群集を護るためには,MPAの面積は対象魚種が区域内で自己維持できる広さであることが望ましい。またMPAは行政主導のトップダウン方式ではなく,地元の人びとの全面的な合意と参加がなければ長続きしないと思われる。区域内を禁漁としても,MPA内で増えた漁業資源が区域外に出て周辺漁場の漁獲量の上昇に寄与するという波及効果(spillover)が実証されれば,漁民は制約にしたがう理由を理解するだろう。また,ダイバーなどの観光客から入場料を徴収すれば,費用をMPAの管理運営や漁民への生活補償に充てることができるだろう。成功の鍵は地域住民に対する継続的な教育啓発活動,住民に信頼されるリーダーの存在と,それに会計および活動内容の透明性である。沖縄の慶良間海域は漁業従事者が少なく,漁業規模が小さい上,ダイビングなどの観光業を支えるさんご礁の価値に対する住民の意識が高い。さんご礁の生物群集は定着性が強いものが多く,住民の生計手段に観光収入が期待できるので,そこでは望ましいMPAのモデルを試行できるように思われる。慶良間海域のさんご礁を念頭に置き,MPAの設定に向けて方法や運用について考察した。\",\"PeriodicalId\":432348,\"journal\":{\"name\":\"Journal of The Japanese Coral Reef Society\",\"volume\":\"219 1\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2010-12-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"3\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Journal of The Japanese Coral Reef Society\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.3755/JCRS.12.81\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Journal of The Japanese Coral Reef Society","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.3755/JCRS.12.81","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 3

摘要

海洋保护区(Marine Protected AreaMPA)在世界上有各种各样的定义,还没有形成统一的概念,但是在2002年的“可持续发展世界首脑会议”上,各国决议在2012年之前设定MPA。第二年,在第5届世界公园会议上提出了“各国在2012年之前建立有效管理的代表性保护区网络,其中包括至少20% ~ 30%的海洋栖息地严格保护区”等建议。这些被称为“2012年目标”,要求各国政府遵守。我国对MPA也没有官方或广泛使用的定义。我国设定MPA的目的是“通过长期有效的手段保护潮间带和潮下带的生物群落整体或生物多样性,实现渔业资源的可持续利用”。MPA指出,“为实现渔业资源的可持续利用,不允许人为改变生长环境,通过法律或其他有效手段禁止或限制生物采集的区域”,即No-take Zone。虽然立即在我国整个沿岸海域引入这样的MPA是很困难的,但可以推测渔业对象能够自我维持其资源的面积,并以此为基础设定临时保护区,在一定时期后,希望进行验证其效果的研究。如果将目标锁定在珊瑚礁上,或许可以设定兼顾渔业和生物多样性的MPA。区域内的渔业活动自不必说,就连游鱼、潜水、研究生物采集都将受到限制。在设立法律制度化MPA方面,菲律宾在亚洲拥有最悠久的历史,它的珊瑚礁生态系统是如何管理运营的,当地人又是如何参与MPA的呢?2010年3月,我们访问了菲律宾的维萨亚地区,我们听取了菲律宾MPA创始人a.c. Alcala博士的意见,他主张,通过在珊瑚礁上建立大量的小MPA(即禁渔区)来保护渔业资源和生物多样性。考察了以阿波岛为首的周边岛屿的MPA,并对当地居民进行了走访调查。为了保护渔业资源和所有生物群落,MPA的面积最好是对象鱼类在区域内能够自我维持的面积。此外,MPA不是由行政主导的自上而下的管理方式,如果没有当地人民的全面同意和参与,MPA将难以持续。即使区域内禁止捕鱼,如果MPA内增加的渔业资源转移到区域外,对周边渔场的捕获量上升产生的波及效果(spillover)得到证实,渔民就会理解遵守限制的理由。另外,如果向潜水员等游客收取门票,费用将用于MPA的管理运营和渔民的生活补偿。成功的关键是对社区居民的持续教育启发活动,存在受居民信赖的领导者,以及会计和活动内容的透明性。冲绳庆良间海域渔业从业人员少,渔业规模小,而且居民对支撑潜水等旅游业的珊瑚礁价值意识很高。珊瑚礁的生物群落大多具有很强的定居性,可以期待旅游收入作为居民的生计手段,因此可以在此试行理想的MPA模式。考虑到庆良间海域的珊瑚礁,针对MPA的设定方法和运用进行了考察。
本文章由计算机程序翻译,如有差异,请以英文原文为准。
日本のさんご礁水域に海洋保護区(MPA)を設定するために:フィリピン,ビサヤ地域の海洋保護区を視察して考える
海洋保護区(Marine Protected Area; MPA)には世界中でさまざまな定義があって,まだ統一的な概念には至っていないが,2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」のなかでは各国が2012年までにMPAを設定することが決議され,さらに翌年の第5回世界公園会議では「各国が2012年までに海洋の各生息地の最低20~30%の厳格な保護区を含む,効果的に管理された代表的な保護区ネットワークを構築する」ことなどが勧告された。これらは「2012年目標」とよばれて,各国政府がそれを遵守することが求められている。わが国のMPAについても公的または広く使われている定義はない。私たちはMPAの設定目的を「潮間帯と潮下帯の生物群集全体あるいは生物多様性を長く効果的な手段で保護することによって漁業資源の持続的な利用を図るため」とし,MPAは「漁業資源の持続的な利用を可能にするために,生育環境の人為的改変を認めず,法律やそのほかの効果的な手段によって生物の採取捕獲が禁止あるいは制限されている区域」すなわちNo-take Zoneのようなものであるべきだと考えている。そのようなMPAを直ちにわが国の沿岸海域全体に導入することは困難だろうが,漁業対象種がその資源を自己維持できる面積を推定し,それをもとに仮の保護区を設定して,一定期間後,その効果を検証するような研究が望まれる。さんご礁に的を絞れば,漁業と生物多様性が両立するMPAの設定は可能かもしれない。区域内では漁業活動はもちろん,遊漁もダイビングも研究のための生物採集も制限の対象にする。法的に制度化されたMPAの設定ではアジアでもっとも古い歴史を持つフィリピンで,さんご礁生態系がよく保護されているMPAはどのように管理運営され,地元の人びとはどのようにMPAに関わっているのだろうか。私達は2010年3月フィリピンのビサヤ地方を訪ねて,さんご礁に小さなMPA(=禁漁区)をたくさん作ることによって漁業資源と生物多様性の両方を護るという戦略を進めてきたフィリピン型MPAの創始者A.C. Alcala博士から意見を聞き,アポ島をはじめとする周辺の島々のMPAを視察して,地元民から聞き取り調査を行った。漁業資源とすべての生物群集を護るためには,MPAの面積は対象魚種が区域内で自己維持できる広さであることが望ましい。またMPAは行政主導のトップダウン方式ではなく,地元の人びとの全面的な合意と参加がなければ長続きしないと思われる。区域内を禁漁としても,MPA内で増えた漁業資源が区域外に出て周辺漁場の漁獲量の上昇に寄与するという波及効果(spillover)が実証されれば,漁民は制約にしたがう理由を理解するだろう。また,ダイバーなどの観光客から入場料を徴収すれば,費用をMPAの管理運営や漁民への生活補償に充てることができるだろう。成功の鍵は地域住民に対する継続的な教育啓発活動,住民に信頼されるリーダーの存在と,それに会計および活動内容の透明性である。沖縄の慶良間海域は漁業従事者が少なく,漁業規模が小さい上,ダイビングなどの観光業を支えるさんご礁の価値に対する住民の意識が高い。さんご礁の生物群集は定着性が強いものが多く,住民の生計手段に観光収入が期待できるので,そこでは望ましいMPAのモデルを試行できるように思われる。慶良間海域のさんご礁を念頭に置き,MPAの設定に向けて方法や運用について考察した。
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