N. Okuta, A. Yasunaga
{"title":"考虑采用健康心理学方法,促进赋予残疾人和残疾人士权力","authors":"N. Okuta, A. Yasunaga","doi":"10.11560/jhpr.p18000001","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"普段,何気なく生活している私たちは,たくさんの人に支えられ生きているということを忘れがちで ある。また,自分の生まれ持った特性や,その特性によって生じる人との差異,そして,精神的な健康 度についても,「健常」であることを疑おうともしない。しかし,何らかの形で障害者と称されるよう になると,途端に誰かの助けなしでは生活できない社会的弱者と見られるようになる。 一般に障害といっても,その障害の種類は多種多様で,一目で障害とわかるものから,伝えられない とわからないものまである。さらに,元々の特性に加え,いじめや差別により,うつや神経症,適応障 害といった複合的な障害に苦しめられることも多い。これら二次障害を呈した者の中には,長い間学校 に通えず,仕事に就けない者も多い。さらにエピソードを辿ると,発達障害や知的水準がボーダーライ ンであるケースも多いことが指摘されている(杉山,2011)。 これまでの障害児者へのケアは,社会的場面での困難さを改善するために,訓練によってできること, 活動の場を増やすことが,行動療法的な手法で展開されてきた。実際,障害者をケアする専門知識を 持った人も増え,障害の種別に合った訓練も精査され,エビデンスも提示されている。しかし,ケアを 受けている障害児者の中には,ほかの人と同じ方法で学べないことやより重い障害のある人とともに訓 練を受けなければならないことに苦悩する者もいる。また,できることが増えたことでさらに葛藤する 者やその葛藤を解決できずケアから脱落していく者もいる。よって,障害児者の気持ちに寄り添い,自 尊感情や自己肯定感を支えていくことや,発達課題に向き合う意欲を支えるアプローチも求められてお り,それらが二次障害を予防することになると考える。 また,障害児者が周りにいる人々をエンパワメントする担い手となっているということもある。障害 児者のケアを担う人々は,懸命にケアする中で,障害児者の気持ちに共感し,「思い」を込め支援を行っ ている。彼らは支援を展開していく中で,思いがけない現象を経験することがある。それが障害児者の 「純粋さ」や「ひたむきさ」に,ケアする人が救われるという現象である。さらに,チームアプローチ では,当事者も役割を担って問題を解決している。そこでは,正解を見つけて提示するのではなく,誰 のための・何のための幸せなのか,そして,そのために何が必要かということを議論し尽くし,合意に 達することを目的としている。このように障害があっても誰かの役に立っていると自覚することは,当 事者をエンパワメントすることとなるだろう。さらに,お互いが支え合いながら社会が成り立っている ということを実感する人が増えていくことは,人権意識や尊厳を育むという形で,社会全体がエンパワ メントされていくきっかけになるかもしれない。 本特集は 2015年 9月に桜美林大学で開催された第 28回大会の会員企画シンポジウム「障害児者をエ ンパワメントするための健康心理学的アプローチを考える」を基に企画した。この企画を支えてくれた茂 木俊彦先生の言葉を借りると,ケアの実践には障害児者とそのケアをしていく人々が「共感」と「科学」 をもって学び合いながら実践されることが大切である。今回寄稿してくださった先生方はいずれもその実 践者である。実践領域での複合的かつ多様化する問題に対し,支援策のエビデンスを検証することには 難しさがあり,その課題を残している論文も多いが,研究分野としてまだ未開発であるからこそ,そこに チャレンジする意義がある。予防やQOLの向上をテーマとする健康心理学的な知見を活かしたアプロー チが障害児者を取り巻く人々と社会のエンパワメントを支えることに貢献することを期待したい。","PeriodicalId":341698,"journal":{"name":"Journal of Health Psychology Research","volume":"1 1","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2019-02-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Consider the health psychological approach to promote empowerment of disabled and disorders\",\"authors\":\"N. Okuta, A. Yasunaga\",\"doi\":\"10.11560/jhpr.p18000001\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"普段,何気なく生活している私たちは,たくさんの人に支えられ生きているということを忘れがちで ある。また,自分の生まれ持った特性や,その特性によって生じる人との差異,そして,精神的な健康 度についても,「健常」であることを疑おうともしない。しかし,何らかの形で障害者と称されるよう になると,途端に誰かの助けなしでは生活できない社会的弱者と見られるようになる。 一般に障害といっても,その障害の種類は多種多様で,一目で障害とわかるものから,伝えられない とわからないものまである。さらに,元々の特性に加え,いじめや差別により,うつや神経症,適応障 害といった複合的な障害に苦しめられることも多い。これら二次障害を呈した者の中には,長い間学校 に通えず,仕事に就けない者も多い。さらにエピソードを辿ると,発達障害や知的水準がボーダーライ ンであるケースも多いことが指摘されている(杉山,2011)。 これまでの障害児者へのケアは,社会的場面での困難さを改善するために,訓練によってできること, 活動の場を増やすことが,行動療法的な手法で展開されてきた。実際,障害者をケアする専門知識を 持った人も増え,障害の種別に合った訓練も精査され,エビデンスも提示されている。しかし,ケアを 受けている障害児者の中には,ほかの人と同じ方法で学べないことやより重い障害のある人とともに訓 練を受けなければならないことに苦悩する者もいる。また,できることが増えたことでさらに葛藤する 者やその葛藤を解決できずケアから脱落していく者もいる。よって,障害児者の気持ちに寄り添い,自 尊感情や自己肯定感を支えていくことや,発達課題に向き合う意欲を支えるアプローチも求められてお り,それらが二次障害を予防することになると考える。 また,障害児者が周りにいる人々をエンパワメントする担い手となっているということもある。障害 児者のケアを担う人々は,懸命にケアする中で,障害児者の気持ちに共感し,「思い」を込め支援を行っ ている。彼らは支援を展開していく中で,思いがけない現象を経験することがある。それが障害児者の 「純粋さ」や「ひたむきさ」に,ケアする人が救われるという現象である。さらに,チームアプローチ では,当事者も役割を担って問題を解決している。そこでは,正解を見つけて提示するのではなく,誰 のための・何のための幸せなのか,そして,そのために何が必要かということを議論し尽くし,合意に 達することを目的としている。このように障害があっても誰かの役に立っていると自覚することは,当 事者をエンパワメントすることとなるだろう。さらに,お互いが支え合いながら社会が成り立っている ということを実感する人が増えていくことは,人権意識や尊厳を育むという形で,社会全体がエンパワ メントされていくきっかけになるかもしれない。 本特集は 2015年 9月に桜美林大学で開催された第 28回大会の会員企画シンポジウム「障害児者をエ ンパワメントするための健康心理学的アプローチを考える」を基に企画した。この企画を支えてくれた茂 木俊彦先生の言葉を借りると,ケアの実践には障害児者とそのケアをしていく人々が「共感」と「科学」 をもって学び合いながら実践されることが大切である。今回寄稿してくださった先生方はいずれもその実 践者である。実践領域での複合的かつ多様化する問題に対し,支援策のエビデンスを検証することには 難しさがあり,その課題を残している論文も多いが,研究分野としてまだ未開発であるからこそ,そこに チャレンジする意義がある。予防やQOLの向上をテーマとする健康心理学的な知見を活かしたアプロー チが障害児者を取り巻く人々と社会のエンパワメントを支えることに貢献することを期待したい。\",\"PeriodicalId\":341698,\"journal\":{\"name\":\"Journal of Health Psychology Research\",\"volume\":\"1 1\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2019-02-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Journal of Health Psychology Research\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.11560/jhpr.p18000001\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Journal of Health Psychology Research","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.11560/jhpr.p18000001","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
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Consider the health psychological approach to promote empowerment of disabled and disorders
普段,何気なく生活している私たちは,たくさんの人に支えられ生きているということを忘れがちで ある。また,自分の生まれ持った特性や,その特性によって生じる人との差異,そして,精神的な健康 度についても,「健常」であることを疑おうともしない。しかし,何らかの形で障害者と称されるよう になると,途端に誰かの助けなしでは生活できない社会的弱者と見られるようになる。 一般に障害といっても,その障害の種類は多種多様で,一目で障害とわかるものから,伝えられない とわからないものまである。さらに,元々の特性に加え,いじめや差別により,うつや神経症,適応障 害といった複合的な障害に苦しめられることも多い。これら二次障害を呈した者の中には,長い間学校 に通えず,仕事に就けない者も多い。さらにエピソードを辿ると,発達障害や知的水準がボーダーライ ンであるケースも多いことが指摘されている(杉山,2011)。 これまでの障害児者へのケアは,社会的場面での困難さを改善するために,訓練によってできること, 活動の場を増やすことが,行動療法的な手法で展開されてきた。実際,障害者をケアする専門知識を 持った人も増え,障害の種別に合った訓練も精査され,エビデンスも提示されている。しかし,ケアを 受けている障害児者の中には,ほかの人と同じ方法で学べないことやより重い障害のある人とともに訓 練を受けなければならないことに苦悩する者もいる。また,できることが増えたことでさらに葛藤する 者やその葛藤を解決できずケアから脱落していく者もいる。よって,障害児者の気持ちに寄り添い,自 尊感情や自己肯定感を支えていくことや,発達課題に向き合う意欲を支えるアプローチも求められてお り,それらが二次障害を予防することになると考える。 また,障害児者が周りにいる人々をエンパワメントする担い手となっているということもある。障害 児者のケアを担う人々は,懸命にケアする中で,障害児者の気持ちに共感し,「思い」を込め支援を行っ ている。彼らは支援を展開していく中で,思いがけない現象を経験することがある。それが障害児者の 「純粋さ」や「ひたむきさ」に,ケアする人が救われるという現象である。さらに,チームアプローチ では,当事者も役割を担って問題を解決している。そこでは,正解を見つけて提示するのではなく,誰 のための・何のための幸せなのか,そして,そのために何が必要かということを議論し尽くし,合意に 達することを目的としている。このように障害があっても誰かの役に立っていると自覚することは,当 事者をエンパワメントすることとなるだろう。さらに,お互いが支え合いながら社会が成り立っている ということを実感する人が増えていくことは,人権意識や尊厳を育むという形で,社会全体がエンパワ メントされていくきっかけになるかもしれない。 本特集は 2015年 9月に桜美林大学で開催された第 28回大会の会員企画シンポジウム「障害児者をエ ンパワメントするための健康心理学的アプローチを考える」を基に企画した。この企画を支えてくれた茂 木俊彦先生の言葉を借りると,ケアの実践には障害児者とそのケアをしていく人々が「共感」と「科学」 をもって学び合いながら実践されることが大切である。今回寄稿してくださった先生方はいずれもその実 践者である。実践領域での複合的かつ多様化する問題に対し,支援策のエビデンスを検証することには 難しさがあり,その課題を残している論文も多いが,研究分野としてまだ未開発であるからこそ,そこに チャレンジする意義がある。予防やQOLの向上をテーマとする健康心理学的な知見を活かしたアプロー チが障害児者を取り巻く人々と社会のエンパワメントを支えることに貢献することを期待したい。