Combined model of infiltration flow within soil layer and preferential flows through soil pipes

降雨の土壌中への浸透は,ほとんどの場合不飽 和浸透現象であるが,飽和浸透流現象である地下 水流に比べて,現象の解明は遅かったようであ る(日野ほか,1989)。不飽和浸透についての毛 管ポテンシャルの概念が提出され(Buckingham, 1907),連続式との結合によって不飽和浸透流方 程式が得られて以降(Richards, 1933),現在では 飽和・不飽和浸透流の解析法が確立され(例えば, 谷,1985;大野ほか,1998),山地斜面における 降雨浸透過程が様々なスケールで計算されている (例えば,小杉,2007;白木・中村,2001;堤ほか, 2007)。 一方,詳細な野外観測により,山地斜面の多く にパイプと呼ばれる斜面にほぼ平行な大孔隙が存 在していることが確認されており(北原,1992; 内田ほか,1995a;Noguchi et al., 1997),多くの 場合複数のパイプの集合によって複雑なネット ワークが形成されていることが報告されている (Terajima et al., 2000; Sidle et al., 2001)。これら土 層中のパイプ等に起因する選択流が山地斜面にお ける降雨流出過程に大きく影響していることが水 文学的な観測から明らかとなっている(例えば, Tsukamoto et al., 1982; Sidle et al., 2000)。 これらのパイプ中に発生する選択流は,浸透流 よりも早く斜面土層内の飽和水を排出することが できるため,降雨時に発生する地下水位の上昇を 抑制し,斜面土層を安定化する機能があると考え られる。一方で,崩壊発生直後の崩壊地の多くに