牛の卵巣嚢腫の病態に関する臨床・内分泌学、生化学および病理組織学的追究

Abstract

牛の卵巣嚢腫の病態を臨床・内分泌学的、生化学的、病理組織学的に追究し、次の成績を得た。(1)嚢腫は退行し、それと共に卵胞が新たな嚢腫になることを21日前後の周期で繰り返すことが超音波画像検査で明らかになった。(2)卵巣嚢腫の牛において、卵胞が発育して嚢腫となる時期に乗駕許容(スタンディング発情)を示す場合があることを認めた。(3)卵胞が発育して嚢腫となる時期にエストラジオール_17βは増加して高値となり、プロジェステロンは低値を示すが、黄体形成ホルモンの一過性大量放出(LHサージ)が起こらないことが明らかとなった。(4)LHサージが起こらないことについては、LHサージを司る視床下部cyclic centerの機能に異常があることが推察された。(5)卵巣嚢腫の牛は慢性肝機能障害および酸化的ストレスの状態にあることが窺われ、それらの異常がLHサージが起こらず卵胞が嚢腫となることに関与している可能性が推察された。(6)嚢腫が最大となった時期に嚢腫卵胞上皮に退行性病変が認められるようになり、嚢腫退行時には卵胞上皮は剥離・欠損して卵胞膜は菲薄となることが判明した。