未経産牛における7.0%重炭酸ナトリウム静脈内輸液剤の急速投与が動脈血液ガス分圧におよぼす影響

Abstract

7.0%重炭酸ナトリウム静脈内輸液剤(重曹注)を大動物臨床現場で自由落下による最大投与速度である200ml/分で未経産牛に2l脈内投与したときの動脈血液pHおよび血液ガス分圧に及ぼす影響を検討した。平均体重446.4±92.3kgのホルスタイン種未経産牛6頭に右側頚静脈から2lの重曹注を急速(200ml/分、投与時間10分、 n=3)または中速投与(66.6ml/分,投与時間30分, n=3)し、投与開始から3分間隔で30分間、その後は投与開始後120および240分目に右側大腿股動脈血液を採血し、血液ガスを測定した。急速および中速投与群の動脈血液pHはそれぞれの投与終了直前に7.626±0.044(前値に対し+0.195)および7.562±0.046(前値に対し+0.149)の最高値を示す有意な上昇が認められた。最高値は急速投与群の方が有意に高値であったが(p＜0.05)、投与開始120および240分後の値に両群間で差は認められなかった。HCO3濃度およびB.E.は投与終了直前にそれぞれ最高値を示す有意な変動が認められたが、投与開始後240分目までの変化量は両群間で差が認められなかったことから、これらの投与速度の差は生物学的利用率に影響しないことが示唆された。以上の結果から、重曹注は健康な成牛に対して臨床現場での実用的な最大速度で急速投与しても臨床徴候に異常を伴わずにアルカリ化作用を示したことから、200ml/分の重曹注急速投与の可能性が示された。